難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★☆☆☆☆(M&Aの基礎)
- 正答率: ★★★★☆(正答率75%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(スキームと評価の基本)
第3問
M&A(企業の合併・買収)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
M&A に当たって企業価値を算定する際には、複数の方法が用いられている。そのうち、マーケット・アプローチとは、M&A の対象となる企業の収益力をベースに、企業価値を算定する方法である。
イ
M&A において、買収価格が買収対象企業の純資産の時価評価額を上回る場合、その差額は「負ののれん」と呼ばれる。
ウ
M&A の手法として事業譲渡をとる場合には、譲渡・承継の対象となる資産や負債を個別に選択することができる。
エ
MBO(Management Buyout)とは、M&A の対象となる企業や事業の経営陣が、投資ファンドなどの第三者に、主体的にその企業を売却して、経営から退くことである。MBO が成立すると、経営陣は退任の見返りとして、金銭的報酬を受け取る。
出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:ウ
解説
ア:×
マーケット・アプローチは「市場比較法」であり、類似上場企業の株価指標や取引事例倍率を用いて評価する。収益力ベースはインカム・アプローチ(DCFなど)。
イ:×
買収価格が純資産の時価評価額を「上回る」差額は「のれん(グッドウィル)」。下回る場合が「負ののれん」。
ウ:〇
事業譲渡は譲渡対象を資産・負債・契約など個別に選択できるスキーム。必要なものだけを切り出せる柔軟性が特徴。
エ:×
MBOは経営陣が主体となって自社(または事業)を買収し、非公開化などを通じて経営権を強化する手法。経営陣が退任して報酬を受け取るスキームではない。
学習のポイント
- 評価アプローチの区別
マーケット(市場比較)、インカム(DCF)、コスト(簿価・再調達原価)の違いを押さえる。 - のれん/負ののれん
買収価格 > 時価純資産=のれん、買収価格 < 時価純資産=負ののれん。 - 事業譲渡の柔軟性
譲渡対象を選べる一方、個別の承継手続(契約移転・許認可・人事)に手間がかかる。 - 主要スキームの違い
株式譲渡=会社丸ごと、合併=包括承継、会社分割=事業単位の包括承継、事業譲渡=選択的個別承継。 - MBOの目的
経営の自由度確保、長期的価値創出のための再編。退任前提ではなく、経営継続が基本。