難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★☆☆☆(ファミリービジネスの基礎)
- 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(スリーサークルモデルの適用)
第9問
次の文章を読んで、問題に答えよ。
株式会社Xの前社長Aは長男Bに代表取締役社長の座を譲り、企業経営から完全に引退した。しかし、Aは株式全体の 55%を引退後も所有しており、Bは株式を所有していない。株式会社Xではない会社に勤務しているAの次男Cが 20%、Aの三男で常勤の専務取締役であるDが 10%、Aの配偶者で専業主婦のEが 15%の株式を有している。
Bが社長に就任した後、数年間は経営が順調であったが、最近は業績が急に悪化して経営の立て直しが求められるようになり、家族が集まり会議が開催された。A、B、C、D、Eそれぞれが、スリーサークルモデルのどこに位置しているかを下図で確認した上で、それぞれの立場に最もふさわしい発言をしているものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア
Aの発言: 大株主として、Bの親として、また日々の経営を任されたものとして今後は行動していかなければならない。
イ
Bの発言: 信頼できる右腕がいなかったことも失敗の大きな要因の 1 つなので、代表取締役の権限で、現在別の会社で働いている友人のF君を新たに専務取締役に決定する。
ウ
Cの発言: 私は、日常の経営に携わっているわけではない。株主への配当がしっかりできるように経営してほしい。
エ
Dの発言: 私は、日々の経営には関心も責任もない。今までと同様に、今後もBの経営を株主としてしっかり監視する。
オ
Eの発言: 次の株主総会でBが代表取締役社長に選ばれるかどうか心配であるが、私はBの母親というだけであって、株主総会で何もできない。
出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:ウ
解説
ア:×
Aは大株主かつ家族だが、経営から完全引退しており「日々の経営を任されたもの」には当たらない(オーナー+ファミリー=領域2)。
イ:×
取締役の選任は株主総会事項であり、社長が単独権限で取締役(専務)を任命することはできない。Bは家族+ビジネス(領域4)。
ウ:〇
Cは家族であり、株式20%保有のオーナーだが事業不関与。配当重視の要請はオーナー視点として妥当(領域2)。
エ:×
Dは家族・専務取締役・株主(10%)で三者に属する中心(領域1)。「日々の経営に責任がない」は不適切。監視は株主の役割だが、経営責任も負う。
オ:×
Eは家族であり株主(15%)。株主総会で議決権を行使できるため「何もできない」は誤り(領域2)。
学習のポイント
- スリーサークルモデルの読み方:
オーナーシップ/ファミリー/ビジネスの3つの円と7領域で、各人の立場と権限・責任の重なりを整理する。 - ガバナンスの基礎:
取締役の選任・解任は原則として株主総会の決議事項。経営陣の人事権限の範囲を区別する。 - 立場ごとの関心の違い:
オーナーは配当・価値最大化、ビジネスは事業継続・現場オペ、ファミリーは関係性・承継。その重なりで発言の妥当性が決まる。 - 試験対策のコツ:
人物ごとの属性(家族/株主/業務執行)を素早く特定し、モデル上の領域にマッピングして選択肢を検証する。