難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★☆☆☆(情報財の特性)
- 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(デジタル経済の理解)
第12問
ソフトウェアやコンテンツなどの情報財には、独自の特性があるとされる。その特性やそこから派生する状況として、どのようなことが想定できるか。最も適切なものを選べ。
ア
インターネットの普及によって情報財の流通コストは低下しているために、情報財をその一部でも無償で提供すると、広告収入以外で収入を獲得することは不可能になる。
イ
情報財では、幅広いユーザーが利用するという特性から、スイッチングコストを生み出して顧客を囲い込む方策は、例外的な状況を除いて有効ではない。
ウ
情報財では、複製にかかるコストが相対的に低いという特性から、個々の顧客が持つ価値に応じて価格差別を行うことは困難である。
エ
情報財において、ネットワーク外部性が大きい状況では、顧客数が増えるほど、その情報財の価値は顧客間で希釈化され、個々の顧客が獲得する効用は低下する。
オ
制作・開発には多額のコストがかかるが、複製にかかるコストは低いという特性を持った情報財では、コモディティ化によって製品市場で激しい価格競争が生じると、複製にかかるコストの近傍まで製品価格が下落して、制作・開発にかかったコストが回収できなくなる可能性がある。
出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:オ
解説
ア:×
情報財は一部を無償提供しても、広告モデルやフリーミアム、課金制など多様な収益化手段が存在する。「広告収入以外は不可能」というのは誤り。
イ:×
情報財はむしろスイッチングコストを高めやすい(例:学習コスト、データ移行コスト、囲い込み戦略)。「有効ではない」というのは誤り。
ウ:×
情報財は複製コストが低いため、むしろバージョニングやダイナミックプライシングなどで価格差別が容易に行われる。困難というのは誤り。
エ:×
ネットワーク外部性が働くと、顧客数が増えるほど価値は増大する(例:SNS、通信サービス)。「効用が低下する」というのは逆。
オ:〇
情報財は「高い初期費用+低い複製費用」という特性を持つ。市場がコモディティ化すると価格は限界費用(ほぼゼロ)に近づき、開発コストが回収できなくなるリスクがある。
学習のポイント
- 情報財の特性:
・制作・開発コスト=高い
・複製コスト=低い
・ネットワーク外部性が強い - 収益化モデル:
広告、フリーミアム、サブスクリプション、バージョニング、二部料金制など多様。 - 競争の帰結:
コモディティ化が進むと価格は限界費用に近づき、開発投資の回収が困難になる。 - 試験対策のコツ:
「高い初期費用+低い複製費用」「ネットワーク外部性」「価格差別のしやすさ」をキーワードで押さえる。