過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第16問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(リーダーシップ理論)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(状況要因の整理)

第16問

リーダーシップ理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。


E.P.ホランダー(E. P. Hollander)の特異性-信頼理論によると、リーダーがフォロワーから信頼を得るためには、集団の目的に貢献する有能性と、集団の自由を重んじる開放性を満たす必要がある。
F.E.フィードラー(F. E. Fiedler)の研究によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況の決定要因とは、①リーダーとメンバーの人間関係、②課業の構造化の度合い、③リーダーの職位に基づくパワーの 3 要因である。
R.リッカート(R. Likert)らによる初期のミシガン研究によると、高業績部門では職務中心的な監督行動が多くみられる一方で、低業績部門では従業員中心的な監督行動が多くみられる。
オハイオ研究によると、有効なリーダーシップの行動特性を表す次元とは、メンバーが良好な人間関係を構築できる「構造づくり」と、課題達成に向けてメンバーに理解しやすい指示を出す「配慮」の 2 つである。
状況的リーダーシップ論(SL 理論)によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況要因とは、目標達成に向けたフォロワーの貢献意欲の強さである。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 ホランダーの特異性−信頼理論(idiosyncrasy credit)は、リーダーが規範遵守と有能性で「信用(裁量)」を蓄積するという枠組み。開放性を必須条件とする記述は不正確。

イ:〇
 フィードラーのコンティンジェンシー理論の状況要因は、リーダー−メンバー関係/課業の構造化/地位権力の3要因。記述通り。

ウ:×
 ミシガン研究は「高業績=従業員中心低業績=職務中心」の傾向。記述は逆。

エ:×
 オハイオ研究の2次元は「構造づくり(Initiating Structure)=課題・役割の構造化」「配慮(Consideration)=人間関係・相互信頼」。説明の取り違えがある。

オ:×
 SL理論(ハーシー&ブランチャード)はフォロワーの成熟度(能力×意欲)に応じてリーダー行動(指示・説得・参加・委任)を調整する。意欲のみを状況要因とするのは不十分。


学習のポイント

  • フィードラーの3要因:
    リーダー−メンバー関係/課業の構造化/地位権力の組合せで状況好適性を判断する。
  • ミシガン研究とオハイオ研究の違い:
    ミシガン=業績との関連で「従業員中心/職務中心」。オハイオ=行動次元「構造づくり/配慮」。
  • SL理論の成熟度:
    能力(Competence)と意欲(Commitment)の両面でフォロワーを評価し、指示・説得・参加・委任を使い分ける。
  • ホランダーのidiosyncrasy credit:
    規範遵守と有能性で信用を蓄積し、非常時の裁量行使が受容される。
  • 用語の取り違え防止:
    「構造づくり=課題側」「配慮=人間関係側」「高業績=従業員中心」をセットで暗記。