過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第17問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(組織行動論の基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(組織コミットメントの理解)

第17問

個人が特定の組織との間に形成する継続的な関係性を説明する概念として、組織コミットメントがある。組織コミットメントに関する記述として、最も適切なものはどれか。


組織の価値観や目標と個人のそれらが一致する場合、個人にとっては組織内で新たに成長できる余地が限られるため、個人の組織コミットメントは弱くなる。
長期にわたって 1 つの組織に参加し続けることが望ましいという社会的な規範は、個人の組織コミットメントを強めるように作用する。
特定の専門的な職務に対する思い入れの強さは、個人の組織コミットメントを強めるように作用する。
特定の組織内では高く評価されるものの、労働市場ではほとんど評価されない技能を習得することは、個人の組織コミットメントを弱めるように作用する。
年功序列的な給与体系の下では、短期間で転職を繰り返すことが個人にとって経済的に不利に作用するため、個人の組織コミットメントは弱くなる。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 組織の価値観や目標と個人のそれらが一致する場合、むしろ「価値的一致型コミットメント」が強まる。記述は逆。

イ:〇
 「規範的コミットメント」と呼ばれるもので、長期的に組織にとどまるべきという社会的規範や義務感が、組織コミットメントを強める。

ウ:×
 特定の専門職務への思い入れは「職務コミットメント」や「専門職コミットメント」であり、組織コミットメントとは区別される。

エ:×
 市場で通用しない技能を持つ場合、転職が難しくなるため「継続的コミットメント(コスト意識型)」が強まる。弱まるのではない。

オ:×
 年功序列的な給与体系では転職が不利になるため、組織にとどまるインセンティブが強まり、継続的コミットメントは高まる。記述は逆。


学習のポイント

  • 組織コミットメントの3類型(Meyer & Allen)
    感情的コミットメントは、組織への愛着や価値観の一致によって強まる。継続的コミットメントは、転職コストや経済的不利益を意識することで強まる。規範的コミットメントは、組織にとどまるべきという義務感や社会的規範によって強まる。
  • 誤答の典型パターン
    職務や専門職への思い入れは「職務コミットメント」であり、組織コミットメントとは別物である。また、転職が不利になる状況は「弱める」ではなく「強める」方向に作用する。
  • 試験対策のコツ
    組織コミットメントは「組織にとどまる心理的要因」と整理し、感情・コスト・規範の3視点で判断する。