過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第21問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(制度派組織論)
  • 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(同型化の分類理解)

第21問

組織は社会的に正当性を獲得する必要が高くなると、組織間の類似性が高くなる同型化(isomorphism)が生じる場合がある。同型化を強制的(coercive)同型化、模倣的(mimetic)同型化、規範的(normative)同型化に分けて考えるとき、同型化に関する記述として、最も適切なものはどれか。


ある組織形態を採用して成功している組織があると、それをベンチマークすることで組織内外から正当性を獲得しやすくなるので、規範的同型化が生じやすい。
同じような教育課程を受けたものが異なる組織に所属している場合、異なる組織でも横断的な集団規範が正当性を獲得する根拠となるため、規範的同型化が生じやすい。
政府による規制があると、それに従う方が正当性を獲得しやすいので、模倣的同型化が生じやすい。
組織文化は組織メンバーへの行為の強制力を持つため、類似の組織文化を持つ組織間では、強制的同型化が生じやすい。
法律に従うことが正当性の根拠を提供する場合には、規範的同型化が生じやすい。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 成功組織の模倣は「模倣的同型化」に該当する。ベンチマークによる模倣は、環境の不確実性に対する反応であり、規範的同型化ではない。

イ:〇
 同じ教育課程を受けた人材が異なる組織に所属することで、専門職集団による横断的な規範が形成され、規範的同型化が生じる。記述は正しい。

ウ:×
 政府による規制は「強制的同型化」の典型。模倣ではなく、法的・制度的圧力による強制。記述は誤り。

エ:×
 組織文化は内的な価値観や行動様式であり、制度的強制力ではない。強制的同型化の源泉とは言えない。記述は不適切。

オ:×
 法律に従うことは制度的圧力への対応であり、「強制的同型化」に該当する。規範的同型化ではない。記述は誤り。


学習のポイント

  • 同型化の3類型(DiMaggio & Powell)
    ・強制的同型化:法規制・制度的圧力による強制
    ・模倣的同型化:成功事例の模倣による収斂
    ・規範的同型化:専門職集団や教育制度による規範の共有
  • 誤答の典型パターン
    法律や政府規制は「強制的」、成功事例の模倣は「模倣的」、教育や資格制度は「規範的」と整理する。
  • 試験対策のコツ
    「圧力=強制」「不確実性=模倣」「教育・資格=規範」と分類して覚えると、選択肢の判別がしやすくなる。