難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★☆☆☆(SDGs経営の基本)
- 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(協創・価値創造の理解)
第28問
経済産業省による「SDGs 経営ガイド」における SDGs と経営に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
SDGs 経営では、大企業やベンチャー企業、大学、研究機関などが連携して研究開発を進める活動を通じて、社会的課題解決のためのイノベーションの協創(collaborative creation)に参加・貢献できる機会がある。
イ
SDGs 経営を心がける企業は、積極的に社会的課題解決を目指すことを通じて取り残されてきた市場を新たに獲得するためには、経済的合理性にこだわってはならない。
ウ
SDGs では 17 の目標と 169 のターゲットが設定されるが、これらの中から自社事業と親和性が高いものだけに偏ることを避け、企業はすべての目標、ターゲットに貢献できるように自社の資源を投入する必要があるとされている。
エ
SDGs は、発展途上国内の「誰一人取り残さない」(leave no one behind)ことを誓っているため、SDGs 経営を心がける企業も同様に、利益を考えず発展途上国内に取り残されるセグメントがないように留意しなければならない。
オ
企業が SDGs に取り組む自社の姿勢を「価値創造ストーリー」の中に位置づけて発信する際には、過去に取り組んできた自社の CSR 活動のすべての事例をそのまま投資家に向けて発信することがよい。
出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:ア
解説
ア:〇
SDGs経営は、多様な主体と連携し社会課題解決のイノベーションを協創する枠組みを重視する。産官学やスタートアップ連携によるオープンイノベーションは典型的な取り組みで、記述は適切。
イ:×
SDGsは社会的価値と経済的価値の両立を志向する。新市場の獲得において経済的合理性を捨てるのではなく、持続可能性と収益性を統合する「価値創造」を目指すため、記述は不適切。
ウ:×
全目標・全ターゲットに一律に資源投入することは推奨されない。自社の事業と親和性が高い課題にフォーカスし、重要課題(マテリアリティ)を選定して優先的に取り組むのが実務的である。
エ:×
「誰一人取り残さない」は重要原則だが、利益を考えないという趣旨ではない。持続可能なビジネスとして、インクルーシブな市場アプローチと収益性の両立を図るべきで、記述は行き過ぎ。
オ:×
投資家への発信は、重要性の高い取り組みをストーリー化し、成果・KPI・リスク機会の文脈で伝えるべきであり、過去のCSR事例の羅列は適切ではない。素材の選別と統合報告の視点が必要。
学習のポイント
- 協創(コ・クリエーション)
産官学・スタートアップ連携によるオープンイノベーションで社会課題を解く。SDGs経営の核となるアプローチ。 - 価値創造と経済的合理性
社会的価値と経済的価値の統合が前提。収益性を捨てるのではなく、持続可能な事業設計で両立させる。 - マテリアリティの選定
重要課題を特定し、資源を集中投入する。全目標への一律対応ではなく、事業親和性と影響度で優先順位を付ける。 - 投資家向け発信の要点
価値創造ストーリーに沿って、戦略・目標・成果指標を整理。CSRの羅列ではなく、戦略的な説明とエビデンスが重要。