過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第32問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(サブスクと価格設計の基本)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(収益モデル・需給調整)

第32問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
X社では、家電および家具の①サブスクリプション・サービスを開始することを検討している。その際、家具とは異なり家電の利用状況は毎月変動する可能性があるため、家電については利用動向に応じて料金が変動する②ダイナミック・プライシングを導入することを併せて検討している。

(設問 1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
1 回千円で飲み放題の居酒屋が、1 か月 3 千円で飲み放題のサブスクリプション・サービスを提供する例は、鉄道・バスの定期券や新聞・雑誌の定期購読のように利用が常態化しているものとは異なり、居酒屋の選択肢が多い消費者にとってメリットがない。
サブスクリプション・サービスの目的の 1 つは、音楽のストリーミング・サービスに典型的に見られるように、ユーザーの利用データを収集し分析することにあるため、家具のサブスクリプション・サービスを展開する場合には家具に何らかのデジタル機能を付加しなければならない。
サブスクリプション・サービスは、消費者が気軽に製品を試す機会を提供することができる。最短でも 2 か月以上利用しなければならないものが多いが、1 か月だけの利用契約もサブスクリプション・サービスに含まれる。
従来は販売により利益を得ていた家具や家電、自動車などの耐久消費財を、利用期間を 3 年、5 年などのように定めた上で提供するサブスクリプション・サービスもある。こうしたサブスクリプション・サービスは提供する側から見ると、どのような場合でも従来のリースよりビジネス上有利であり魅力がある。

(設問 2)
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
AI による需要予測に基づいて機械的に商品の価格を上下させるシステムを導入した結果、台風襲来によるボトル水の需要急増の兆しを捉えて価格を引き上げてしまい、社会的に非難を浴びた例があった。このことから、現在では生活必需品へのダイナミック・プライシングの導入は禁止されている。
企業がダイナミック・プライシングを導入するためには、電子商取引のシステムを取り入れ、需要予測、価格変動などの仕組みを自社で構築する必要がある。
公共交通機関が朝夕の混雑を緩和するためにダイナミック・プライシングを導入し、比較的空いているオフピークの時間帯の価格を下げると、ただでさえ利用者に不満が多いピーク時には相対的に高額な利用料となる。
コンサートやスポーツ・イベントのチケットに関するダイナミック・プライシングでは、購入時期に応じて価格を変動させる例がある。しかし席のエリア別に異なる料金を設定し、かつ売れ行きに応じて価格を変動させるものはダイナミック・プライシングとは呼ばない。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

  • 設問1:ウ
  • 設問2:ウ

解説(設問1)

ア:×
 定額の提供が消費者にメリットがないとは限らない。利用頻度が高い層には費用の予見可能性や割安感が生まれ、店舗側には需要の平準化・継続関係の構築という利点がある。

イ:×
 サブスクの目的は継続利用の促進と関係性の構築であり、必ずしもデジタル機能の付加を要しない。家具でも契約情報・利用期間・交換履歴などで十分に運営・分析は可能。

ウ:〇
 サブスクは「期間定額での継続的提供」を指し、1か月契約のような短期でも、継続前提のサービス設計に含まれる。試用機会の拡大も典型的メリット。

エ:×
 サブスクが常にリースより有利とは言えない。回転率、保守コスト、残存価値、解約率などモデルの前提により優劣は変わる。一律に有利とは断定できない。


解説(設問2)

ア:×
 生活必需品へのダイナミック・プライシングは禁止されているわけではない。ただし倫理・レピュテーションの観点から配慮が必要で、乱用は非難を受ける。

イ:×
 導入に自社構築は必須ではない。店舗でもオンラインでも、外部サービスやアルゴリズムを活用して段階料金・需給連動の設計は可能。

ウ:〇
 オフピーク割引で混雑分散を狙うのは典型設計。相対的にピーク価格が高く見え、心理的反発は生じ得るが、需給調整の観点では適切な施策。

エ:×
 席エリア別料金に加え、売れ行き(需要)に応じて価格を変えるのはまさにダイナミック・プライシング(収益最大化のイールドマネジメント)である。


学習のポイント

  • サブスクの定義と範囲
    定額×期間で継続提供するモデル。1か月など短期契約も含み、試用機会の拡大や関係性の強化につながる。
  • サブスクとリースの違い
    価格設定・保守費・回収・在庫回転・解約率で経済性が変動。常に有利ではなく、事業構造に応じて選択する。
  • ダイナミック・プライシングの目的
    需給に合わせ価格を調整し、混雑緩和・収益最大化・機会損失削減を図る。オフピーク割引は典型施策。
  • レピュテーションへの配慮
    生活必需品や災害時は価格変動が反発を招きやすい。透明性・上限設定・事前告知などで信頼を維持する。