過去問解説(企業経営理論)_2021年(令和3年) 第37問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(基礎的な調査手法の理解)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(マーケティング・リサーチの基本)

第37問

マーケティング・リサーチに関する記述として、最も適切なものはどれか。


アイトラッキング、fMRI(機能的磁気共鳴画像)、GPS などを通して収集される消費者の意識化されない活動データや言語化が難しい反応データは、消費者が回答するアンケートなどの意識データと併せて分析することで、より正確な調査結果を得ることができる。
観察法、インタビュー法、リード・ユーザー法などの探索的調査では、それぞれ収集データの質が異なるため、原則として、探索的調査は調査目的に対して1つの方法で実施される。
新製品開発におけるニーズ探索において、実際に対象製品が使用される家庭にビデオを設置し、一定期間、当該製品の使用状況を観察する調査はギャング・サーベイと呼ばれる。
量的研究では、データ収集を進めながら徐々に事象の原因や原因の背後に潜む問題点を精緻化していくといった帰納的な方法で仮説を作り出していくのに対して、質的研究では、過去の研究蓄積や理論に基づいて演繹的に仮説を立案し、実験や調査を通して仮説が検証される。

出典: 中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:〇
 アイトラッキングやfMRI、GPSなどによる無意識・行動データは、アンケート等の意識データと統合することで、認知・情動・行動の三側面から精度の高い知見が得られる。異種データのトライアングレーションは近年の標準的アプローチ。

イ:×
 探索的調査は単一手法に限定せず、観察・インタビュー・リードユーザー法などを組み合わせて相互補完的に実施するのが望ましい。収集データの質が異なるからこそ複線化する。

ウ:×
 家庭での使用状況をビデオで観察するのは「観察調査」や「ホームユーステスト」に分類される。ギャング・サーベイは複数人を一堂に集めて討議するグループ調査であり、記述は誤り。

エ:×
 量的研究は一般に演繹的(仮説→検証)で、質的研究は帰納的(データから仮説生成)に進むことが多い。記述は量的/質的の方向性が逆転している。


学習のポイント

  • データ統合の意義:
    無意識・生体・位置データとアンケートを統合し、測定バイアスを補正して洞察の解像度を高める。
  • 探索的調査の設計:
    問題発見段階では複数手法を併用し、方法間で得られる知見を照合する。
  • 手法の正しい対応:
    ギャング・サーベイ=集団討議、ホームユーステスト=家庭での使用評価、観察調査=行動の自然観察。
  • 量的と質的の違い:
    量的=演繹的な仮説検証、質的=帰納的な仮説生成。研究設計で役割を使い分ける。