過去問解説(企業経営理論)_2020年(令和2年) 第28問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(マーケティング概念の整理)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(マーケティング思想の変遷理解)

問題文

マーケティング・コンセプトおよび顧客志向に関する記述として、最も適切なものはどれか。


企業は顧客を創造し、顧客の要望に応えることを基礎とする一方で、競合他社との競争にも気を配る必要がある。これらをバランスよく両立する企業は、セリング志向であるということができる。
ケーキ店Xが「どの店でケーキを買うか選ぶときに重視する属性」についてアンケートを複数回答で実施した結果、回答者の89%が「おいしさ、味」を選び、「パッケージ・デザイン」を選んだのは26%だった。顧客志向を掲げるXはこの調査結果を受け、今後パッケージの出来栄えは無視し、味に注力することにした。
マーケティング・コンセプトのうちシーズ志向やプロダクト志向のマーケティングは、顧客志向のマーケティングが定着した今日では技術者の独りよがりである可能性が高く、採用するべきではない。
マーケティング・コンセプトはプロダクト志向、セリング志向などを経て変遷してきた。自社の利潤の最大化ばかりでなく自社が社会に与える影響についても考慮に入れる考え方は、これらの変遷の延長線上に含まれる。
マーケティング・コンセプトを説明した言葉の中に、“Marketing is to make selling unnecessary” というものがあるが、これはマーケティングを「不用品を売ること」と定義している。

出典: 中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
 顧客志向と競争志向をバランスさせるのは「マーケティング志向」であり、セリング志向ではない。

イ:×
 顧客志向は顧客の多様なニーズを総合的に捉えるものであり、少数派のニーズを無視することは顧客志向に反する。

ウ:×
 シーズ志向やプロダクト志向も、革新的な技術や新市場開拓においては依然として有効であり、必ずしも否定されるものではない。

エ:〇
 マーケティング・コンセプトは、プロダクト志向→セリング志向→マーケティング志向→社会志向へと発展してきた。社会志向は利潤追求だけでなく社会的影響も考慮する立場であり、設問の記述に合致する。

オ:×
 ピーター・ドラッカーの言葉 “Marketing is to make selling unnecessary” は「マーケティングは販売を不要にすること」と説明しており、「不用品を売ること」ではない。


学習のポイント

  • マーケティング・コンセプトの変遷:
    プロダクト志向 → セリング志向 → マーケティング志向 → 社会志向。
  • 社会志向マーケティング:
    利潤最大化に加え、社会的責任や持続可能性を考慮する。
  • 試験対策のコツ:
    「セリング=売り込み」「マーケティング=顧客志向」「社会志向=社会的責任」と整理して覚える。