難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★★☆☆(顧客満足とSDLの要点)
- 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(サービス発想の理解)
問題文
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
サービス・マーケティング研究は、①顧客満足研究と相互に影響しあいながら新しい考え方を生み出してきた。市場の成熟化にともない②経済のサービス化が進む中、顧客満足を追求する企業のマーケティング手法にも、新しい発想が求められている。
(設問1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
(設問2)
文中の下線部②に関して、サービス・マーケティングにおいて注目されているサービス・ドミナント・ロジックに関する記述として、最も適切なものはどれか。
出典: 中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
- 設問1:ア
- 設問2:エ
解説
(設問1)
ア:〇
現場でのサービス品質は「権限委譲(エンパワーメント)」と「支援型マネジメント」で向上する。顧客接点の判断裁量を高め、中間管理職は障害除去と資源供給に注力するのが望ましい。
イ:×
不良顧客への過剰配分は収益性を損ねやすい。関係性の選別と資源の最適配分(優良顧客維持・育成)が基本で、退出管理も戦略の一部。
ウ:×
中程度満足はスイッチ可能性が高く、価格センシティビティも上がりやすい。重要なのは「不満の是正」と同時に「満足の深化(エンゲージメント・感動体験)」である。
エ:×
高度成長期の日本は新規顧客獲得・拡大志向が強かった。既存顧客維持の重視は市場成熟化以降に高まった。
(設問2)
ア:×
サービス・ドミナント・ロジック(SDL)は機能価値の拡張より「価値共創(企業と顧客の協業)」を重視する。部品採用やアウトソーシングの有無はSDLの本質ではない。
イ:×
価値は売り手と買い手の協業で共創され、製造業でもインターナル・マーケティング(従業員を顧客とみなし内部整備)は重要。価値が低いという前提も誤り。
ウ:×
モノとサービスを二極化する発想はGDL(Goods-Dominant Logic)に近い。SDLは両者を統合し、使用価値・体験価値の創出に焦点を当てる。
エ:〇
製品の使用価値を顧客が引き出せるように、モノ+サービスで価値提案し、教育や体験提供で「価値共創」を促すのがSDLの要点。
学習のポイント
- 顧客満足の実務:
・現場の権限委譲と支援型マネジメントでサービス・エンカウンターを強化。
・資源配分は顧客生涯価値(CLV)を軸に最適化し、退出も含む関係戦略を設計。 - SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の要点:
・価値は「使用状況」で共創される(使用価値)。
・モノはサービス提供の媒体(サービス化)。
・顧客教育・体験設計・コミュニティ運営で共創を促進。 - 試験対策のコツ:
「GDL=モノ中心/交換価値」「SDL=共創/使用価値」と対で整理。
顧客満足は単なる不満解消でなく、体験品質とエンゲージメントを高める設計が鍵。