過去問解説(企業経営理論)_2019年(令和元年) 第30問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★☆☆(デジタル・マーケティングとクチコミ理解)
  • 正答率: ★★★☆☆(正答率60%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(現代マーケティングの必須知識)

問題文

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

マスメディアとさまざまなプロモーショナル・メディアを組み合わせたコミュニケーションを前提としてきた伝統的なマーケティングから、近年急速に①デジタル・マーケティングへのシフトが進んでいる。このシフトは、②消費者同士の情報交換がソーシャルメディアなどを介して盛んに行われるようになっていることに対応した動きでもある。

(設問 1)

文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。

企業やマーケターが顧客と接したり会話したりする「タッチポイント」は、店舗などの物理的空間だけに限定せず、オンライン上にもさまざまな形で設定される。
需給バランスや時期などに応じて価格を変動させるダイナミック・プライシングのような方法は、デジタル・マーケティングの時代になって初めて登場した価格設定方法である。
デジタル・マーケティングにおいては、製品開発のための資金をオンライン上の多数の消費者から調達するクラウド・ソーシングの手法がしばしば用いられる。
デジタル財の特徴として、複製が容易である(複製可能性)、他者が使用すると直ちに価値が低下する(価値の毀損性)、オンラインで瞬時に転送できる(非空間性)の3つをあげることができる。

(設問 2)

文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。

クチコミには、経験しないと判断できない「経験属性」に関する情報が豊富に含まれている。
クチコミの利便性を向上するために、クチコミを集約したランキングや星評価などが導入されたことにより、かえってクチコミの利便性が低下している。
消費者同士がオンライン上で交換したクチコミ情報が蓄積される場所は、蓄積される情報や場の運営に関して消費者が主導権を持っているという意味で「オウンドメディア」と呼ばれる。
マーケターが、企業と無関係な消費者であるかのように振る舞って情報を受発信することは、当該企業にとっての長期的利益につながる。

出典: 中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

  • 設問1:ア
  • 設問2:ア

解説

【設問1】

ア:〇
デジタル・マーケティングでは、顧客接点(タッチポイント)はオンライン上にも広がり、SNS、ECサイト、メール、アプリなど多様な形で設定される。

イ:×
ダイナミック・プライシングは航空券やホテル業界などで以前から存在しており、デジタル時代に初めて登場したものではない。

ウ:×
製品開発資金を多数の消費者から調達するのは「クラウドファンディング」であり、クラウドソーシングとは異なる。

エ:×
デジタル財は「複製可能性」「非競合性(他者が使っても価値が減らない)」「非空間性」が特徴。設問の「価値の毀損性」は誤り。

【設問2】

ア:〇
クチコミは、実際に経験しないと分からない「経験属性」に関する情報を多く含むため、消費者の意思決定に大きな影響を与える。

イ:×
ランキングや星評価は利便性を高める仕組みであり、利便性を低下させるものではない。

ウ:×
クチコミが蓄積される場は「オウンドメディア」ではなく、一般に「CGM(Consumer Generated Media)」や「レビューサイト」などと呼ばれる。オウンドメディアは企業が主体的に運営する媒体。

エ:×
ステルスマーケティング(企業が消費者を装う行為)は不適切であり、長期的利益を損なうリスクが高い。


学習のポイント

  • デジタル・マーケティング
    ・タッチポイントはオンラインにも拡大。
    ・ダイナミック・プライシングはデジタル以前から存在。
    ・クラウドファンディングとクラウドソーシングを区別。
    ・デジタル財の特徴=複製可能性・非競合性・非空間性。
  • クチコミの特徴
    ・経験属性に関する情報が豊富。
    ・ランキングや星評価は利便性を高める。
    ・オウンドメディアは企業主体、クチコミサイトは消費者主体。
    ・ステルスマーケティングは不適切。
  • 試験対策のコツ
    ・「タッチポイント=オンライン拡大」が正解のポイント。
    ・「クチコミ=経験属性情報」が正解のポイント。
    ・用語の混同(クラウドソーシング/ファンディング、オウンドメディア/CGM)に注意。