過去問解説(財務・会計)_2022年(令和4年) 第13問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★☆☆(資金繰り表の作成・読み取り)
  • 正答率: ★★★☆☆(タイミング条件の理解が鍵)
  • 重要度: ★★★★☆(キャッシュマネジメントの実務)

問題文

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

A社では、X1年4月末に以下のような資金繰り表(一部抜粋)を作成した(表中のカッコ内は各自推測すること)。

(単位:万円)

5月 6月
前月末残高 1,000 470
経常収支(収入)現金売上 200 240
経常収支(収入)売掛金回収 800 800
収入合計 1,000 1,040
経常収支(支出)現金仕入 720 (   )
経常収支(支出)諸費用支払 510 540
支出合計 1,230 (   )
収支過不足 -230 (   )
備品購入支出 300 0
当月末残高 470 (   )

売上高の実績額および予想額は以下のとおりである。(単位:万円)

4月(実績) 5月(予想) 6月(予想) 7月(予想)
1,000 1,000 1,200 1,600

また、条件は以下のとおりである。

  • ① 売上代金の20%は現金で受け取り、残額は翌月末に受け取る。
  • ② 仕入高は翌月予想売上高の60%とする。仕入代金は全額現金で支払う。
  • ③ すべての収入、支出は月末時点で発生するものとする。
  • ④ 5月末に事務用備品の購入支出が300万円予定されているが、それを除き、経常収支以外の収支はゼロである。
  • ⑤ A社では、月末時点で資金残高が200万円を下回らないようにすることを、資金管理の方針としている。

(設問1)
A社は資金不足に陥ることを避けるため、金融機関から借り入れを行うことを検討している。6月末の時点で資金残高が200万円を下回らないようにするには、いくら借り入れればよいか。最も適切なものを選べ。ただし、借入金の利息は年利率5%であり、1年分の利息を借入時に支払うものとする。

ア 190万円
イ 200万円
ウ 460万円
エ 660万円

(設問2)
中小企業診断士であるあなたは、A社の経営者から、当座の資金繰り対策として銀行借り入れ以外の手段がないか、アドバイスを求められた。6月末の時点で資金残高が200万円を下回らないようにするための手段として、最も適切なものはどれか。

5月に予定されている事務用備品の購入支出のうち半額を現金払いとし、残額の支払いは7月に延期する。
6月に予定されている諸費用支払のうち400万円を現金払いとし、残額の支払いは7月に延期する。
仕入先と交渉して、6月の仕入代金のうち半額を現金払いとし、残額を買掛金(翌月末払い)とする。
得意先と交渉して、5月の売上代金のうち半額を現金で受け取り、残額を売掛金(翌月末回収)とする。

出典: 中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|財務・会計(PDF)

解答

  • 設問1:イ
  • 設問2:ウ

解説

前提の整理(収入・支出の算定ロジック)

  • 売上代金の受け取り:当月現金20%、残額80%は翌月末に回収。
  • 仕入高:翌月予想売上高の60%を当月末に全額現金支払い。
  • 諸費用支払:5月=510、6月=540(いずれも月末支払い)。
  • 5月末に備品購入300あり。その他の非経常なし。

5月の確認(与件の妥当性チェック)

  • 現金売上(5月):予想売上1,000×20%=200(与件と一致)。
  • 売掛金回収(5月):4月売上1,000×80%=800(与件と一致)。
  • 現金仕入(5月):6月予想売上1,200×60%=720(与件と一致)。
  • 収支過不足(5月):収入1,000−支出1,230=−230、当月末残高=1,000+(−230)−備品300=470(与件と一致)。

6月の数値の算定

  • 現金売上(6月):1,200×20%=240(与件と一致)。
  • 売掛金回収(6月):5月売上1,000×80%=800(与件と一致)。
  • 現金仕入(6月):7月予想売上1,600×60%=960。
  • 支出合計(6月):現金仕入960+諸費用540=1,500。
  • 収入合計(6月):1,040。収支過不足(6月)=1,040−1,500=−460。
  • 当月末残高(6月)=前月末残高470+収支過不足(−460)=10。

設問1(借入必要額)

  • 方針:6月末残高が200以上必要。現状10なので、差分190の資金不足。
  • 年利5%の1年分利息を借入時に支払い → 借入額Bに対して利息0.05Bを即支払うため、純増資金はB−0.05B=0.95B。
  • 必要純増資金190=0.95B → B=200。
  • よって「イ:200万円」。

設問2(銀行借入以外の手段)

  • 6月の支出の主因は「現金仕入960」と「諸費用540」。資金不足を月末で回避するには、当月キャッシュアウトを減らす施策が最適。
  • 「ウ:6月の仕入代金の半額を買掛金(翌月末払い)にする」→ 当月の現金仕入を960→480に圧縮。収支過不足が−460→−(460−480)=+20へ改善。6月末残高=470+20=490(200以上)。
  • 他選択肢の妥当性:
  • ア:5月の備品支払を半額延期(300→150)しても、既に5月末残高は470で6月の不足幅(−460)は変わらず、6月末残高は10+150=160となり方針(200以上)を満たせない。
  • イ:6月の諸費用を400のみ支払い(540→400)としても、支出合計1,360→収支過不足=1,040−1,360=−320、6月末残高=470−320=150で未達。
  • エ:5月の現金受け取りを増やす施策はすでに条件①に反し、しかも与件の資金繰り表の数値と矛盾するため不適切。

学習のポイント

  • 月末計上・翌月回収/支払いのタイミングを丁寧にトレースする。
  • 借入時の「即時利息支払い」は純増資金に与える影響(0.95B)で考える。
  • キャッシュ不足の改善は「現金支出の当月圧縮」または「受入の当月増加」。仕入の買掛化は王道施策。