難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する)
- 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい)
- 重要度:★★★☆☆(頻出ではないが、学習価値が高い)
問題文
工業所有権の保護に関するパリ条約に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 同盟国の間で締結された多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は、優先権を生じさせるものと認められることが、パリ条約に規定されている。
イ 同盟に属しない国の国民は、いずれかの同盟国の領域内に住所または現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する場合であっても、同盟国の国民とはみなされない。
ウ パリ条約は、原産地表示を保護対象として掲げていない。
エ 優先権主張の優先期間は、意匠および商標については、特許および実用新案と同様、12カ月であることがパリ条約に規定されている。
出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
正解:ア
解説
ア:〇
パリ条約は、同盟国間で締結された多数国間条約により「正規の国内出願」とみなされる出願についても、優先権を生じさせることを認めている。国際的な制度調和の一環として、国内出願と同等に扱われる場合がある。
イ:✕
パリ条約では、同盟国に住所または現実かつ真正な工業上・商業上の営業所を有する者は、同盟国の国民とみなされる。したがって、同盟非加盟国の国民であっても、この要件を満たせば同盟国民と同様の取扱いを受ける。
ウ:✕
パリ条約は、特許・実用新案・意匠・商標に加え、原産地表示や不正競争防止に関する規定も含む。原産地表示は保護対象に含まれている。
エ:✕
優先権の期間は、特許・実用新案が12カ月であるのに対し、意匠・商標は6カ月である。意匠・商標も12カ月とする記述は誤り。
学習のポイント
- 優先権期間の区別:特許・実用新案は12カ月、意匠・商標は6カ月。混同しやすいので注意。
- 国民の定義拡張:同盟非加盟国の国民でも、同盟国内に住所や真正な営業所があれば同盟国民とみなされる。
- 保護対象の広さ:原産地表示や不正競争防止もパリ条約の保護対象。
- 正規の国内出願の扱い:同盟国内の条約により正規の国内出願とされるものも優先権の基礎となる。