過去問解説(経営法務)_2024年(R6年) 第20問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する。)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

民法が定める売買契約の契約不適合責任に関する記述として、最も適切なものはどれか。

売主が種類または品質に関して売買契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主は、追完請求、損害賠償請求および契約の解除をすることができるが、代金の減額請求については、民法に明文の規定はない。
買主が売買の目的物の数量に関して売主の契約不適合責任を追及する場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければならない。
引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しない場合について、売主が契約不適合責任を負わない旨の特約も可能であるが、かかる特約が存在する場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができない。
引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、履行の追完を請求することができるが、売主は、買主が請求した追完方法が売主に不相当な負担を課するものであるときは、買主が請求した方法と異なる方法により履行の追完をすることができる。

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:✕
 改正民法では、契約不適合責任において代金減額請求権が明文で規定されている。したがって「明文の規定はない」とする本肢は誤り。

イ:✕
 数量に関する契約不適合も、原則として「目的物の種類・品質・数量」に関する不適合として扱われるが、通知期間は「不適合を知った時から1年以内」が原則。数量に限定して特別扱いする規定はないため、本肢の限定的表現は不正確。

ウ:〇
 契約不適合責任を免除する特約は有効だが、売主が不適合を知りながら告げなかった場合には、その特約によっても責任を免れない。この点は民法で明文規定されている。

エ:✕
 売主は、買主が請求した追完方法が不相当な負担となる場合、他の方法での追完を拒否できるが、民法上は「他の方法で履行できる」とは規定されていない。請求方法の変更は合意や別途の条件が必要であり、本肢の記述は誤解を招く。


学習のポイント

  • 改正民法(2020年施行)で「契約不適合責任」に統一され、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除が明文化された。
  • 免責特約は原則有効だが、売主の悪意(知りながら告げない)には適用されない。
  • 通知期間は「知った時から1年以内」が原則(商人間売買等の特則あり)。
  • 契約不適合責任は種類・品質・数量のいずれにも適用される。