過去問解説(経済学・経済政策)_2023年(R5年) 第10問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★★★☆(開放経済のIS-LM-BP分析)
  • 正答率: ★★★☆☆(図と制度の理解)
  • 重要度: ★★★★☆(為替制度と政策効果)

問題文

下図は、開放経済下における小国のマクロ経済モデルを描いている。この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

(設問1)

この図に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

水平なBP曲線は、国際的な資本移動が利子率に対して完全に弾力的であることを意味している。
開放経済下のIS曲線の傾きは、閉鎖経済下のIS曲線に比べて、より急な形状になる。
外国利子率が上昇すると、BP曲線は下方にシフトする。

〔解答群〕

a:正  b:正  c:正
a:正  b:正  c:誤
a:正  b:誤  c:正
a:誤  b:正  c:誤
a:誤  b:誤  c:誤

(設問2)

この国が変動為替レート制を採用しているとき、GDPの変化に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

政府支出の増加は、IS曲線を右方にシフトさせるが、自国通貨高による純輸出の減少によってその効果は相殺され、自国のGDPに影響しない。
政府支出の増加は、自国通貨高を防ぐための名目貨幣供給の増加を伴って、自国のGDPを増加させる。
名目貨幣供給の増加は、LM曲線を右方にシフトさせるが、自国通貨安を防ぐための名目貨幣供給の減少によってその効果は相殺され、自国のGDPに影響しない。
外国利子率の低下は、海外からの資本流入によって自国通貨高を招き、自国のGDPを減少させる。

〔解答群〕

a:正  b:誤  c:正  d:正
a:正  b:誤  c:正  d:誤
a:正  b:誤  c:誤  d:正
a:誤  b:正  c:誤  d:正
a:誤  b:正  c:誤  d:誤

出典: 中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経済学・経営政策(PDF)

解答

  • 設問1:イ(a:〇/b:〇/c:×)
  • 設問2:ウ(a:〇/b:×/c:×/d:〇)

解説

設問1:IS-LM-BPモデル

  • a:〇
     BP曲線が水平であることは、利子率のわずかな差でも資本移動が無制限に起こる「完全資本移動」を意味する。
  • b:〇
     開放経済では輸出入の影響が加わるため、IS曲線は財市場の均衡条件がより敏感になり、傾きは急になる。
  • c:×
     BP曲線は「外国利子率=自国利子率」の水準で描かれるため、外国利子率が上昇すればBP曲線は「上方」にシフトする。

設問2:変動為替レート制下の政策効果

  • a:〇
     政府支出の増加はIS曲線を右方にシフトさせるが、通貨高による純輸出の減少がその効果を打ち消し、GDPは変化しない。
  • b:×
     変動為替レート制では中央銀行は為替介入を行わず、名目貨幣供給の調整は行われないため、このような対応は取られない。
  • c:×
     名目貨幣供給の増加はLM曲線を右方にシフトさせるが、通貨安を防ぐために供給を減らすという対応は、変動相場制では行われない。
  • d:〇
     外国利子率が低下すると、相対的に自国の利子率が高くなり、資本流入が起こる。これにより通貨高が生じ、純輸出が減少し、GDPが下がる。

学習のポイント

  • BP曲線の意味: 完全資本移動では水平。利子率の差があれば即座に資本が移動する。
  • IS曲線の傾き: 開放経済では輸出入の影響が加わり、傾きが急になる。
  • 変動為替レート制の特徴: 為替レートは市場で決まり、中央銀行は介入しない。財政政策は通貨高を招き、効果が打ち消されやすい。
  • 資本移動と通貨高: 外国利子率の低下 → 資本流入 → 通貨高 → 純輸出減少 → GDP減少