難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★☆☆☆(債券の基礎と財政理論)
- 正答率: ★★★★☆(定番論点)
- 重要度: ★★★☆☆(政策・市場の基本知識)
問題文
国債に関する下記の設問に答えよ。
(設問1)
国債に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
国債の価格が上昇すると、その利回りは低下する。
イ
国債は、マネーストック(広義流動性)に含まれない。
ウ
日本銀行が金融政策の手段として国債を市場で売買することは禁止されている。
エ
日本銀行は、国債を保有していない。
オ
日本政府は、物価連動国債を発行していない。
(設問2)
政府の国債発行に関する理論についての記述として、最も適切なものはどれか。
ア
課税平準化の理論によれば、課税による超過負担を最小化する観点から、異時点間の税収の変動を抑えるように年々の国債発行額を決定するのが望ましい。
イ
貨幣数量説が成立する古典派経済学の枠組みでは、国債発行を伴う財政政策は、金利の低下を通じて民間投資を促進する効果を持つ。
ウ
ケインズ経済学の枠組みでは、流動性のわなが存在する状況下での国債発行を伴う財政政策は、金利の上昇を引き起こすために無効となる。
エ
国債の中立命題によれば、ある時点での国債発行は、家計に将来時点での増税を予期させるために、マクロ経済に与える効果は中立的となる。
出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経済学・経営政策(PDF)
解答
- 設問1:ア
- 設問2:ア
解説(設問1:論点の確認)
- ア:〇
債券価格と利回り(利子率)は逆方向に動く。価格が上がるほど既存利回りは低下するのが基本。 - イ:×
国債は「広義流動性(L)」に含まれる。有価証券の一部として、広い概念のマネーストックに算入される。 - ウ:×
日本銀行は公開市場操作として国債の売買を行う(禁止ではない)。 - エ:×
日本銀行は政策運営上、国債を保有している(ゼロではない)。 - オ:×
日本政府は物価連動国債(個人向けではない機関投資家向け中心)を発行している。
解説(設問2:政府の国債発行理論)
- ア:〇
課税平準化(tax smoothing)は、税の超過負担を最小化するために税率の時間的変動を抑え、景気変動や支出ショックに対して国債発行で平準化する考え方。 - イ:×
古典派の枠組み(貨幣数量説・クラウディングアウト)では、財政支出拡大はむしろ金利上昇による民間投資の抑制が典型。金利低下で投資促進とは言えない。 - ウ:×
流動性のわなでは金利がゼロ近傍で下がりにくく、財政政策はむしろ有効化しやすい(乗数が働く)。「金利上昇で無効」は誤り。 - エ:×
国債の中立命題(リカードの中立命題)は厳しい仮定の下で「中立」とするが、一般には現実の摩擦(流動性制約・世代間・税の歪み)により中立が崩れるため、最も適切とは言えない。
学習のポイント
- 債券の基本: 価格↑ ⇔ 利回り↓、公開市場操作で国債を売買。
- 広義流動性: 現金・預金に加え、国債なども含む広い概念。
- 課税平準化: 税率の変動を抑え、国債で景気や支出のショックを平準化。
- 理論の見取り図: 古典派はクラウディングアウト、ケインズは不完全雇用で財政有効、リカードは強い仮定で中立。