過去問解説(経済学・経済政策)_2023年(R5年) 第18問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(情報の不完全性:モラルハザード vs 逆選択)
  • 正答率: ★★★★☆(典型事例の見分け)
  • 重要度: ★★★☆☆(保険設計・インセンティブの基礎)

問題文

情報の不完全性に起因するモラルハザードを軽減することを主な目的として行われる事例として、最も適切なものはどれか。

家電製品の製造業者が、顧客が製品を購入してから一定の期間内までは無償の保証サービスを提供する。
企業が投資資金を調達するにあたって、自社が発行する債券への格付けを民間の格付け会社から取得する。
被保険者の医療費をカバーする健康保険制度において、保険料の負担が被保険者である労働者だけでなく、雇用主側にも課せられる。
保険会社が、契約者であるドライバーが対物事故を起こした場合に、当該事故に伴う損害費用のうち一定金額を超える部分のみ補償を行う。
持ち家の所有者が旅行者に宿泊サービスを提供する場合、当該サービス取引の仲介業者が、住宅の貸し手に過去の利用者によるサービス評価を公表することを義務付ける。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経済学・経営政策(PDF)

解答

  • 正解: エ

解説

  • ア:×
    無償保証は購入後の品質不安を軽減し販売促進やシグナリングに寄与するが、利用者の取扱いを甘くする動機(モラルハザード)をむしろ高める可能性があり、軽減策とは言えない。
  • イ:×
    債券格付けの取得は投資家向け情報開示を通じて「逆選択(事前の質の見分け問題)」を緩和する施策。契約後の行動の変化で生じるモラルハザードの軽減が主目的ではない。
  • ウ:×
    保険料の負担を雇用主にも課すのは財源配分の仕組みで、モラルハザードの抑制(自己負担や控除・共同保険・免責などによる行動インセンティブ調整)とは直接的に結びつかない。
  • エ:〇
    一定金額を超える部分のみ補償する「免責(ディダクタブル)」設計は、小額損失の自己負担を残し、被保険者の注意・予防努力を促す典型的なモラルハザード軽減策。
  • オ:×
    過去評価の公表義務はプラットフォームでの品質の可視化により「逆選択」を緩和する事前情報の整備。モラルハザード抑制の中心手段ではない。

学習のポイント

  • モラルハザードの主な対策: 免責金額、自己負担率(共同保険)、保険料の経験料率、フランチャイズ、ボーナス・マラスト制度。
  • 逆選択との違い: 契約「前」の質の見分け(格付け・レビュー・シグナリング・スクリーニング)は逆選択対策、契約「後」の行動抑制がモラルハザード対策。