難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する。)
- 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい。)
- 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)
問題文
株主総会に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
株主総会の報告事項及び決議事項について、株主総会における決議及び報告のいずれも省略することが可能となった場合、株主総会の開催を省略することができるため、株主総会議事録の作成も不要となる。
イ
公開会社ではない会社及び公開会社のいずれの会社においても、取締役又は株主が提案した株主総会の目的である事項について、当該提案につき議決権を行使することができる株主の全員から書面又は電磁的方法により同意の意思表示があったときは、当該提案を可決する旨の決議があったものとみなされる。
ウ
公開会社ではない会社においては、株主総会は、株主全員の同意があるときは招集手続を経ることなく開催することができるが、公開会社においては、定款に書面による議決権行使及び電磁的方法による議決権行使に関する定めがあるか否かにかかわらず、株主全員の同意があっても、招集手続を経ることなく株主総会を開催することはできない。
エ
公開会社ではない会社においては、取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことについて株主の全員が書面又は電磁的方法により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなされるが、公開会社においては、このような株主全員の同意の意思表示があっても、当該事項の株主総会への報告があったものとみなされない。
出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
正解:イ
解説
ア:✕
株主総会の開催を省略できる場合であっても、会社法上、議事録の作成義務は免除されない。議事録は会社の意思決定の記録として重要であり、省略できるとする本肢は誤り。
イ:〇
公開会社・非公開会社を問わず、株主総会の目的事項について、株主全員が書面または電磁的方法により同意した場合は、当該事項について決議があったものとみなされる。これは会社法上認められている手続であり、正しい記述である。
ウ:✕
非公開会社では株主全員の同意があれば招集手続を省略できるが、公開会社では株主全員の同意があっても招集手続の省略は認められていない。よって本肢は誤り。
エ:✕
非公開会社では、報告事項について株主全員の同意があれば報告があったものとみなされるが、公開会社ではこのみなし規定は適用されない。公開会社にも適用されるとする本肢は誤り。
学習のポイント
- 株主総会の省略・みなし決議は、株主全員の同意が前提となるが、公開会社では制限がある。
- 議事録の作成義務は、株主総会の開催有無にかかわらず原則として必要。
- 報告事項の省略や決議の省略に関する制度は、公開会社と非公開会社で異なるため、区別して理解することが重要。