過去問解説(経営法務)_2023年(R5年) 第5問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する。)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

以下の会話は、株式会社の設立を考えている甲氏と中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。なお、甲氏は、定款を書面で作成することを考えている。

(設問1)会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

A:発起設立、募集設立のいずれの場合でも、乙氏は発起人にならなければなりません
B:X株式会社は法人なので、発起人になることはできません
A:発起設立、募集設立のいずれの場合でも、乙氏は発起人にならなければなりません
B:法人も発起人になることができますので、X株式会社も発起人になることができます
A:発起設立によって株式会社を設立する場合には乙氏は発起人にならなければなりませんが、募集設立によって株式会社を設立する場合には、必ずしも乙氏は発起人になる必要はありません
B:X株式会社は法人なので、発起人になることはできません
A:発起設立によって株式会社を設立する場合には乙氏は発起人にならなければなりませんが、募集設立によって株式会社を設立する場合には、必ずしも乙氏は発起人になる必要はありません
B:法人も発起人になることができますので、X株式会社も発起人になることができます

(設問2)会話の中の空欄CとDに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。なお、定款では設立時取締役として定められた者はいないものとする。

C:いいえ。設立時取締役は必ずしも発起人でなくてもよいので、必ずしも甲氏が設立時取締役になる必要はありません
D:発起設立、募集設立のいずれの場合も、発起人全員の同意によって選任することになります
C:いいえ。設立時取締役は必ずしも発起人でなくてもよいので、必ずしも甲氏が設立時取締役になる必要はありません
D:発起設立の場合は、発起人の議決権の過半数により、募集設立の場合は、創立総会の決議によって選任することになります
C:はい。甲氏は発起人ですので、必ず設立時取締役にならなければなりません
D:発起設立の場合は、発起人全員の同意により、募集設立の場合は、創立総会の決議によって選任することになります
C:はい。甲氏は発起人ですので、必ず設立時取締役にならなければなりません
D:発起設立の場合は、発起人の議決権の過半数により、募集設立の場合は、創立総会の決議によって選任することになります

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

  • 設問1:エ
  • 設問2:イ

解説

【設問1】

ア:✕
 発起設立・募集設立のいずれの場合でも、株式を引き受ける者が必ず発起人になるとは限らない。乙氏が発起人になる必要があるとする本肢は誤り。

イ:✕
 乙氏が必ず発起人になるとする点は誤り。法人であるX株式会社が発起人になれる点は正しいが、組み合わせとして不適切。

ウ:✕
 募集設立では乙氏が発起人になる必要はない点は正しいが、法人が発起人になれないとするBの記述は誤り。

エ:〇
 発起設立では株式引受人は発起人となるが、募集設立では発起人以外の者が株式を引き受けることが可能。法人も発起人になれるため、X株式会社も発起人になれる。両方正しい記述である。

【設問2】

ア:✕
 Cの記述は正しいが、Dの「発起人全員の同意による選任」は発起設立に限られ、募集設立では創立総会の決議が必要。両方正しいとは言えない。

イ:〇
 Cの記述は正しく、設立時取締役は発起人でなくてもよい。Dの記述も、発起設立では発起人の議決権の過半数、募集設立では創立総会の決議による選任とされており、正しい。

ウ:✕
 Cの「発起人は必ず設立時取締役にならなければならない」とする点は誤り。Dの記述は正しいが、組み合わせとして不適切。

エ:✕
 Cの記述が誤り。Dは正しいが、組み合わせとして不適切。


学習のポイント

  • 発起設立では発起人が株式を引き受けるが、募集設立では発起人以外の者も引受可能。
  • 法人も発起人になれるため、自然人に限られない。
  • 設立時取締役は発起人でなくてもよく、定款に定めがない場合は、発起設立では発起人の議決権過半数、募集設立では創立総会の決議で選任される。
  • 設立形態によって手続が異なるため、発起設立と募集設立の違いを整理しておくことが重要。