過去問解説(経営法務)_2022年(R4年) 第14問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基本知識の組み合わせ。やや思考を要する。)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70〜90%。比較的易しい。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

以下の会話は、発明家である甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話の中の空欄に入る記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


甲氏:「私は便利な掃除用具を発明しました。われながらとても良いアイデアであり、特許を取ってみたいと考えています。そこで質問があります。

実はこの発明を1か月前に発明展に展示してしまいました。そのときはまだ特許を取るなんて全然考えていなかったので、発明展に自発的に応募して出品しました。しかし、先週になって特許を取りたいと思うようになりました。

新規性がないということで、この発明の特許を取得することは無理でしょうか。この発明展は1週間にわたり開催されました。一般に開放したので、老若男女問わず多くの来場者がありました。新規性を喪失しても救済される制度が特許法にあると聞きました。この制度について教えていただけないでしょうか。」

あなた:「発明の新規性喪失の例外規定ですね。A。知り合いの弁理士をご紹介しましょうか。」


〔解答群〕

新規性を喪失した日から1年以内に特許出願をする必要があります。そして、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して発明が新規性を喪失した場合にも、所定の手続的要件を充足することで、この適用を受けられます
新規性を喪失した日から18か月以内に特許出願すればこの適用を受けられます。しかし、この適用を受けられるのは、特許を受ける権利を有する者の意に反して発明が新規性を喪失した場合に限られます
新規性を喪失した日から18か月以内に特許出願をする必要があります。そして、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して発明が新規性を喪失した場合にも、所定の手続的要件を充足することで、この適用を受けられます
新規性を喪失した日から2年以内に特許出願すればこの適用を受けられます。しかし、この適用を受けられるのは、特許を受ける権利を有する者の意に反して発明が新規性を喪失した場合に限られます

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ア
新規性喪失の例外規定は、自己の行為による公開でも適用可能。出願は1年以内。


解説

ア:〇
新規性を喪失した日から1年以内に特許出願すれば、例外規定の適用を受けられる。自己の行為による公開でも、所定の手続を満たせば救済される。正しい記述。

イ:×
期間が誤り。新規性喪失の例外規定は1年以内の出願が必要。さらに、自己の行為による公開も対象となるため、「意に反して」のみに限定する記述も誤り。

ウ:×
期間が誤り。18か月ではなく1年以内の出願が必要。その他の記述は正しいが、期間の誤りにより不適切。

エ:×
期間が誤り。2年ではなく1年以内の出願が必要。また、「意に反して」のみに限定する記述も誤り。


学習のポイント

  • 特許法には、新規性喪失の例外規定があり、自己の行為による公開でも所定の手続を満たせば救済される。
  • 出願は公開から1年以内が原則。期間の誤認に注意。
  • 「意に反して」だけでなく、「自己の行為による公開」も対象となる点が重要。
  • 展示会・発表・出版など、公開の形態を問わず、制度の趣旨と要件を正確に理解しておくことが求められる。