過去問解説(経営法務)_2022年(R4年) 第17問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。契約実務と独禁法の理解に直結。)

問題文

以下の会話は、X株式会社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話に基づき下記の設問に答えよ。


甲氏:「弊社は、Y社から商品を輸入し、国内で販売しようと考えています。それに当たって、Y社から届いた契約書案を検討しているのですが、以下の規定の中で、弊社にとって不利な箇所はありませんでしょうか。

9.Seller warrants to Buyer that the Goods purchased by Buyer from Seller shall be free from defects in raw material and workmanship.
Buyer shall indemnify and hold Seller harmless from and against any and all liabilities, damages, claims, causes of action, losses, costs and expenses(including attorneysʼ fees)of any kind, royalties and license fees arising from or for infringement of any patent by reason of any sale or use of the Goods.

10.If Buyer terminates this Agreement and Seller has procured raw material for such releases occurring after the termination date in accordance with Buyerʼs product releases, Buyer shall purchase such raw material from Seller at a price determined by Seller。」

あなた:「9条は、Aという点で、10条は、御社が本契約を解除した一方で、売主が契約終了日以降の御社の製品発売に合わせて、原材料を調達していた場合に、Bという点で、それぞれ御社にとって、不利な条項となっています。」

甲氏:「ありがとうございます。その点については、Y社と交渉しようと思います。また、Y社からは、日本での商品の小売価格につき、Y社が決めたものに従っていただきたいと言われています。」

あなた:「その点も含めて、知り合いの弁護士を紹介しますので、相談に行きませんか。」

甲氏:「ぜひよろしくお願いします。」


(設問1)

会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。


A:商品につき、売主が何らの保証もしない
B:売主が決めた価格で売主から当該原材料を購入する
A:商品につき、売主が何らの保証もしない
B:当該原材料がすべて消費できるまで、売主から製品を購入する
A:商品に特許侵害があった場合、御社が責任を負う
B:売主が決めた価格で売主から当該原材料を購入する
A:商品に特許侵害があった場合、御社が責任を負う
B:当該原材料がすべて消費できるまで、売主から製品を購入する

(設問2)

会話の中の下線部のように、商品の卸売契約において、小売価格を拘束するような規定を定めることは、わが国では違法となる可能性があるとされているが、その根拠となる法律として、最も適切なものはどれか。


商法
独占禁止法
特定商取引に関する法律
不正競争防止法

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

設問1:ウ
設問2:イ


解説

【設問1】

ア:×
9条には品質保証が明記されており、「何らの保証もしない」とする記述は誤り。

イ:×
10条では、契約終了後に売主が調達した原材料を買主が購入する義務があるが、「製品を購入する」とする記述は誤り。

ウ:〇
9条後半では、特許侵害に関して買主が売主を補償する義務があるため、「御社が責任を負う」という記述は正しい。10条では、売主が調達した原材料を、売主が決めた価格で買主が購入する義務があるため、Bも正しい。

エ:×
Bの「製品を購入する」は契約条文と異なるため誤り。

【設問2】

ア:×
商法は価格拘束に関する規定を持たない。契約の一般原則を定める法律であり、独占的取引制限には関与しない。

イ:〇
小売価格の拘束は、再販売価格維持行為として独占禁止法により原則禁止されている。正しい根拠法。

ウ:×
特定商取引法は訪問販売や通信販売など消費者保護を目的とした法律であり、価格拘束には関係しない。

エ:×
不正競争防止法は営業秘密や模倣行為などを対象とする法律であり、価格拘束には関係しない。


学習のポイント

  • 契約条文の英文を正確に読み取り、責任の所在や義務の内容を把握する力が問われる。
  • 特許侵害に関する補償条項は、輸入契約において買主側に不利となる場合がある。
  • 再販売価格維持行為は、独占禁止法により原則禁止されており、契約実務でも注意が必要。
  • 契約条項の不利性を見抜く力と、関連法令の適用判断が重要。