過去問解説(経営法務)_2022年(R4年) 第19問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)

問題文

保証に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。


事業のために負担した借入金を主たる債務とし、法人を保証人とする保証契約は、その契約に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で当該法人が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
主たる債務者が死亡して相続人が限定承認した場合でも、保証人は主たる債務の全額について保証債務を履行しなければならない。
保証契約がインターネットを利用した電子商取引等において、電磁的記録によってされただけでは有効とはならず、電子署名が付される必要がある。
保証契約締結後、主たる債務者が保証人の承諾なく、主たる債務の債務額を増額する合意をした場合、保証債務の債務額も増額される。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:イ
主たる債務者が限定承認しても、保証人は全額履行義務を負う。


解説

ア:×
公正証書による意思表示が必要なのは「個人が事業用借入金を保証する場合」。法人保証にはこの要件は課されない。記述は誤り。

イ:〇
主たる債務者が死亡し、相続人が限定承認しても、保証人は主債務の全額について履行義務を負う。保証人の責任は主債務者の相続方法に左右されない。正しい記述。

ウ:×
保証契約は電磁的記録でも有効。ただし、個人が事業用借入金を保証する場合は、書面または電磁的記録による意思表示が必要だが、電子署名までは要件とされていない。記述は誤り。

エ:×
保証契約締結後に主債務が増額された場合、保証人の承諾がなければ保証債務も増額されない。保証人の同意が必要。記述は誤り。


学習のポイント

  • 保証人の責任は、主債務者の相続方法(限定承認など)に影響されない。
  • 個人保証に関する厳格な要件(公正証書など)は、法人保証には適用されない。
  • 保証契約の有効性は、電磁的記録でも成立するが、電子署名は必須ではない。
  • 債務額の増加には保証人の同意が必要。契約締結後の変更は自動的に保証範囲に含まれない。