過去問解説(経営法務)_2022年(R4年) 第20問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★☆☆(頻出ではないが、学習価値が高い。)

問題文

相殺に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。


債権が差押えを禁じたものである場合でも、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができる。
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前に取得した債務者に対する債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない。
相殺の意思表示には期限を付することはできないが、条件を付することはできる。
二人が互いに相手方に対し同種の目的を有する債務を負担する場合で、自働債権が弁済期にあれば、受働債権の弁済期が到来していなくとも、期限の利益を放棄することで、相殺することができる。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:エ
期限の利益を放棄すれば、受働債権が未到来でも相殺可能。


解説

ア:×
差押禁止債権(例:生活保護費など)は、相殺によって債権者に対抗することはできない。記述は誤り。

イ:×
差押え前に取得した債権による相殺は、差押債権者に対抗可能。記述は誤り。

ウ:×
相殺の意思表示には、条件も期限も付すことはできない。記述は誤り。

エ:〇
自働債権が弁済期にあり、受働債権が未到来でも、期限の利益を放棄すれば相殺可能。正しい記述。


学習のポイント

  • 相殺には「同種の債務」「相互の債務」「弁済期到来」などの要件がある。
  • 相殺の意思表示には、条件・期限を付すことはできない。
  • 受働債権の弁済期が未到来でも、期限の利益を放棄することで相殺可能。
  • 差押禁止債権や差押え後の債権取得など、相殺の対抗要件には制限がある。