過去問解説(経営法務)_2022年(R4年) 第22問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(改正民法の理解が必要。条文知識が問われる。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(相続法改正に関する重要論点。)

問題文

相続に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置は考慮しないものとする。


相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分について、登記その他の対抗要件を備えなくても、第三者に対抗することができる。
相続人が数人ある場合において、一部の相続人が相続放棄をしたときは、放棄をした者を除いた共同相続人の全員が共同しても、限定承認をすることができない。
相続人が相続財産である建物につき、5年の賃貸をしたとしても、単純承認をしたものとはみなされない。
被相続人の配偶者が取得した配偶者居住権を第三者に対抗するためには、居住建物の引渡しでは認められず、配偶者居住権の設定の登記をしなければならない。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:エ
配偶者居住権を第三者に対抗するには、登記が必要。


解説

ア:×
法定相続分を超える部分については、登記などの対抗要件がなければ第三者に対抗できない。記述は誤り。

イ:×
限定承認は「相続人全員の共同」で行う必要があるが、相続放棄者は最初から相続人でない扱いとなるため、残った相続人だけで限定承認は可能。記述は誤り。

ウ:×
相続財産の処分(例:賃貸)は、原則として単純承認とみなされる。5年の賃貸は処分行為に該当し、単純承認とみなされる可能性がある。記述は誤り。

エ:〇
配偶者居住権は、登記をすることで第三者に対抗できる。引渡しのみでは対抗力は生じない。正しい記述。


学習のポイント

  • 配偶者居住権は、2020年施行の改正民法で導入された新制度。登記によって第三者に対抗可能。
  • 限定承認は「相続人全員の共同」が原則だが、相続放棄者は除外されるため、残った相続人のみで限定承認可能。
  • 相続財産の処分行為は、単純承認とみなされる可能性があるため、慎重な判断が必要。
  • 相続分の対抗要件(登記など)は、法定相続分を超える部分に特に注意。