過去問解説(経営法務)_2021年(R3年) 第2問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(改正民法の理解が必要。条文ベース。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(契約の効力・破産との関係は実務でも重要。)

問題文

民法が定める消費貸借に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。


金銭の消費貸借契約がその内容を記録した電磁的記録によってなされたとしても、その消費貸借は、諾成的消費貸借契約としての効力を有することはない。
書面により金銭の消費貸借契約を締結した場合、貸主から金銭を受け取る前に借主が破産手続開始の決定を受けたときは、当該消費貸借は、その効力を失う。
書面により金銭の消費貸借契約を締結した場合、借主は、貸主から金銭を受け取る前であっても、当該契約を解除することはできない。
書面により金銭の消費貸借契約を締結した場合、当該契約書に返還時期を定めたときは、借主は、当該返還時期まで、金銭を返還することはできない。

出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:イ
借主が金銭を受け取る前に破産手続開始決定を受けた場合、契約は効力を失う。


解説

ア:×
改正民法では、電磁的記録による諾成的消費貸借契約も有効とされている。記述は誤り。

イ:〇
書面による金銭消費貸借契約において、借主が金銭を受け取る前に破産手続開始決定を受けた場合、契約は効力を失う(民法第587条の2)。正しい記述。

ウ:×
借主は、金銭を受け取る前であれば契約を解除することができる。記述は誤り。

エ:×
返還時期の定めがあっても、借主は任意に返還することができる。記述は誤り。


学習のポイント

  • 改正民法では、消費貸借契約の成立形態として「諾成的契約」が認められ、書面または電磁的記録での締結が可能。
  • 金銭の受領前に借主が破産した場合、契約の効力が失われることで、貸主の保護が図られている。
  • 書面契約でも、金銭未受領であれば解除可能。契約の拘束力は受領をもって強化される。
  • 返還時期の定めは、返還義務の期限であり、早期返還を妨げるものではない。