過去問解説(経営法務)_2021年(R3年) 第3問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(制度の適用条件を正確に理解する必要あり。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。やや引っかけ要素あり。)
  • 重要度:★★★☆☆(合併手続の理解は企業法務の基礎。)

問題文

いわゆる簡易合併手続に関する会社法における記述として、最も適切なものはどれか。


簡易合併手続においては、存続会社のすべての株主に株式買取請求権が認められるが、存続会社における債権者保護手続は不要である。
簡易合併手続は、吸収合併契約締結から合併の効力発生日まで20日あれば、実施することが可能である。
簡易合併手続は、存続会社及び消滅会社のいずれにおいても、合併承認に係る株主総会の決議を不要とする手続である。
存続会社の全株式が譲渡制限株式であり、かつ、合併対価の全部又は一部がかかる存続会社の譲渡制限株式である場合、簡易合併手続を用いることはできない。

出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:エ
譲渡制限株式を対価とする場合、簡易合併手続は利用できない。


解説

ア:×
簡易合併でも、株式買取請求権は一定の要件で認められるが、債権者保護手続は原則として必要。記述は誤り。

イ:×
合併の効力発生日までに必要な期間は、公告や債権者保護手続などを含めると20日では足りない場合が多い。記述は誤り。

ウ:×
簡易合併は、原則として「存続会社側」の株主総会を省略できる制度。消滅会社側では株主総会が必要。両社とも不要とする記述は誤り。

エ:〇
会社法では、合併対価として譲渡制限株式を交付する場合、簡易合併手続は利用できない。正しい記述。


学習のポイント

  • 簡易合併は、存続会社が消滅会社の純資産の一定割合以下を取得する場合に、株主総会を省略できる制度。
  • ただし、譲渡制限株式を合併対価とする場合は、株主の権利保護の観点から簡易合併は認められない。
  • 消滅会社側では、原則として株主総会が必要。
  • 債権者保護手続は、合併による債務引受があるため、簡易合併でも省略されない。