難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★☆☆(破産・再生手続の制度理解が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(企業法務・債権管理に直結する重要論点。)
問題文
破産手続及び民事再生手続に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
破産手続においては、否認権は認められているが、民事再生手続においては、否認権は一切認められていない。
イ
破産手続においては、別除権が認められているため、担保権者は破産手続によらずに担保権を行使することができるが、民事再生手続においては、別除権は認められていないため、担保権者は民事再生手続外で、担保権を行使することはできない。
ウ
破産手続においては、法人・自然人を問わず、破産者の破産手続開始時におけるすべての財産が破産財団となり、そのすべての財産を金銭に換価して配当に充てることとなるが、民事再生手続においては、必ずしも、民事再生手続開始時におけるすべての財産を換価するものではない。
エ
破産手続は、申立てによる他、裁判所の職権によって開始する場合もある。
出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
正解:エ
破産手続は、申立てによる他、裁判所の職権でも開始されることがある。
解説
ア:×
否認権は、破産手続だけでなく民事再生手続にも認められている。記述は誤り。
イ:×
民事再生手続でも別除権は認められており、担保権者は再生手続外で担保権を行使できる。記述は誤り。
ウ:×
破産手続では財産を換価して配当するが、民事再生手続では事業継続を前提とするため、必ずしも全財産を換価するわけではない。記述の後半は正しいが、前半の「破産者のすべての財産が破産財団となる」は誤り(非換価財産も存在し得る)。全体として誤り。
エ:〇
破産手続は、債務者や債権者の申立てによるほか、裁判所が職権で開始することもある(例:債務者が死亡した場合など)。正しい記述。
学習のポイント
- 否認権は、破産・民事再生ともに存在し、偏頗弁済などを取り消す手段として機能する。
- 別除権は、担保権者の保護のため、再生手続でも認められる。
- 民事再生は事業再建型手続であり、財産の換価は原則ではない。
- 破産手続は、申立てだけでなく、裁判所の職権でも開始される例外がある。