難易度・正答率・重要度
難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や、誤答肢の吟味が必要。)
正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)
問題文
民法の定める解除に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。
ア
契約の性質により、特定の日時に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したときでも、催告をしなければ、契約の解除は認められない。
イ
債権者が履行を催告した時における不履行の程度が軽微といえないのであれば、その後催告期間中に債務者が債務の一部を履行したため、催告期間が経過した時になお残る不履行が軽微である場合でも、契約の解除は認められる。
ウ
債務の不履行が債権者のみの責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告したとしても、契約の解除は認められない。
エ
債務の不履行につき、債務者と債権者のいずれにも帰責事由がないときは、債務の全部の履行が不能である場合でも、債権者による契約の解除は認められない。
出典:中小企業診断協会|2021年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
正解:ウ
解説
ウ:債務の不履行が債権者のみの責めに帰すべき事由による場合、債権者は解除権を行使できない。これは、債務者に帰責性がない以上、解除によって契約関係を一方的に破棄することが不合理であるため。正しい記述。
ア:誤り
契約の性質上、履行の時期が本質的である場合(定期契約など)は、履行されないままその時期を経過すれば、催告なしで解除が可能。催告が必要とする記述は誤り。
イ:誤り
解除の可否は、催告期間終了時点での不履行の程度によって判断される。催告時点では軽微でなくても、催告期間終了時点で軽微であれば解除は認められない。記述は誤り。
エ:誤り
履行不能が発生し、契約目的が達成できない場合は、帰責事由の有無にかかわらず解除が認められる。記述は誤り。
学習のポイント
- 契約解除は、債務不履行の責任所在と履行不能の状況に応じて判断される。
- 債権者にのみ帰責性がある場合は、解除権を行使できない。
- 定期契約など、履行時期が本質的な契約では、催告なしで解除可能。
- 催告後の不履行の軽微性は、解除の可否に直接影響する。
- 履行不能の場合、帰責事由がなくても解除は可能。