過去問解説(経営法務)_2020年(R2年) 第5問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(制度の構造理解と登記・対抗要件の知識が必要。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★★☆(組織再編に関する基本論点。実務でも重要。)

問題文

会社法が定める株式会社の合併に関する記述として、最も適切なものはどれか。


吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記がなされるまでは第三者に対抗することができない。
吸収合併存続会社は、債権者異議手続が終了していない場合においても、合併契約に定めた効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
吸収合併存続会社は、私法上の権利義務のほか、吸収合併消滅会社が有していた行政機関による許認可などの公法上の権利義務についても、その権利義務の種類を問わず、当然に、その全てを吸収合併消滅会社から引き継ぐ。
吸収合併における合併の対価は、株式に限られ、金銭を対価とすることはできない。

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ア
吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記がなされるまでは第三者に対抗することができない。


解説

ア:〇
会社法では、吸収合併による解散は登記をもって第三者に対抗できるとされている。登記前は対抗要件を満たさないため、第三者に対して効力を主張できない。正しい記述。

イ:×
債権者異議手続が終了していない場合、効力発生日であっても権利義務の承継は制限される。異議手続の完了が前提となるため、記述は誤り。

ウ:×
公法上の権利義務(行政機関の許認可など)は、私法上の権利義務と異なり、当然に承継されるわけではない。許認可の内容によっては再取得が必要な場合もある。記述は誤り。

エ:×
合併の対価は株式に限られず、金銭その他の財産も認められている。会社法上、柔軟な対価設定が可能であるため、記述は誤り。


学習のポイント

  • 合併による解散は登記をもって第三者に対抗可能となる。
  • 債権者保護手続(異議申立)は効力発生の前提条件。
  • 公法上の権利義務(許認可等)は承継されない場合がある。
  • 合併の対価は株式以外にも金銭等が認められている。