過去問解説(経営法務)_2020年(R2年) 第22問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(請負・委任の制度的違いを理解しているかが問われる。)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
  • 重要度:★★★☆☆(契約実務における基本論点。)

問題文

請負又は委任に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。


委任において、受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
請負人が品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合、注文者は、その引渡しを受けた時から1年以内に当該不適合を請負人に通知しない限り、注文者が当該不適合を無過失で知らなかった場合でも、当該不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることはできない。
不可抗力によって委任事務の履行をすることができなくなったときは、受任者は、既にした履行の割合に応じた報酬さえも請求することはできない。
不可抗力によって仕事を完成することができなくなった場合において、仕事内容が可分であり、注文者が既履行部分の給付によって利益を受けるときでも、請負人は、当該利益の割合に応じた報酬さえも請求することはできない。

出典:中小企業診断協会|2020年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ア
委任において、受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。


解説

ア:〇
委任契約では、原則として受任者が復受任者を選任するには委任者の許諾が必要。ただし、やむを得ない事由がある場合には例外的に許される。正しい記述。

イ:×
改正民法では、注文者が不適合を無過失で知らなかった場合には、1年以内に通知しなくても請求が可能。通知義務は「知った時から1年以内」であり、知らなかった場合は除外される。記述は誤り。

ウ:×
不可抗力で委任事務が履行不能となった場合でも、既に履行した部分に対しては報酬請求が可能。記述は誤り。

エ:×
請負契約において、仕事が可分であり、注文者が既履行部分から利益を受ける場合には、請負人はその利益の割合に応じて報酬を請求できる。記述は誤り。


学習のポイント

  • 委任契約では、復受任者の選任には原則として委任者の許諾が必要。
  • 請負契約では、目的物の不適合に関する通知義務は「知った時から1年以内」であり、無過失で知らなかった場合は除外される。
  • 不可抗力による履行不能でも、既履行部分に対する報酬請求は可能。
  • 可分な仕事で注文者が利益を受ける場合、請負人は報酬請求が認められる。