難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★★☆(応用的な推論や制度比較が必要。)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度。)
- 重要度:★★★★☆(頻出論点。制度理解に直結。)
問題文
X株式会社(以下「X社」という。)は、取締役会及び監査役会を設置している会社(公開会社ではなく、かつ大会社ではない)である。
中小企業診断士であるあなたは、2019年1月に、今年(2019年)の株主総会のスケジュール等について、X社の株主総会担当者の甲氏から相談を受けた。以下の会話は、その相談の際のものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
甲氏:「当社の事業年度は、4月1日から翌年3月31日までです。2019年は6月27日(木)に株主総会を開催したいと考えています。株主総会の招集通知はいつまでに発送すればよいですか。」
あなた:「御社では、株主総会に出席しない株主に、書面による議決権の行使や、電磁的方法による議決権の行使を認める制度を設けていますか。」
甲氏:「いいえ。設けていません。」
あなた:「そうすると、御社は、取締役会を設置している会社ですが、公開会社ではありませんし、また、書面による議決権の行使や、電磁的方法による議決権の行使を認める制度を設けていないので、Aまでに招集通知を発送する必要があります。」
甲氏:「分かりました。ところで、今回の株主総会でも、昨年と同様、3年前まで当社の取締役であった乙氏が、『自分を取締役に選任しろ』という議案を株主提案として提出してくると聞いています。どのような点に注意した方がよいでしょうか。」
あなた:「御社では、定款で株主提案に関する何らかの規定は設けていますか。」
甲氏:「いいえ。定款では特に規定は設けていません。」
あなた:「B」
(設問1)
会話の中の空欄Aに入る記述として、最も適切なものはどれか。
(設問2)
会話の中の空欄Bに入る記述として、最も適切なものはどれか。
出典:中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
設問1:ア
設問2:ウ
解説
【設問1】
ア:〇
書面・電磁的方法による議決権行使制度を設けていない非公開会社の場合、株主総会の招集通知は「株主総会の1週間前まで」に発送すればよい。正しい記述。
イ:×
2週間前は公開会社や議決権行使制度を設けている会社に適用される。記述は誤り。
ウ・エ:×
定款によって期間を短縮できるのは公開会社等に限られる。非公開会社では原則1週間前。
【設問2】
ウ:〇
株主提案が過去に同一内容で否決され、総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった場合、3年間は会社が提案を拒絶できる。昨年の賛否状況を確認する必要がある。正しい記述。
ア:×
議案通知請求は「株主総会の8週間前まで」が原則。6週間前では遅い。記述は誤り。
イ:×
株主提案権の要件は「議決権の1%以上または300個以上を6か月以上保有」。記述は誤り。
エ:×
法令・定款に違反する議案は通知義務の対象外。記述は誤り。
学習のポイント
- 招集通知の発送期限は、会社の種類と議決権行使制度の有無で異なる。
- 株主提案権には、議決権保有要件と提出期限がある。
- 同一議案が過去に否決された場合、一定期間は会社が拒絶可能。
- 法令違反の議案は通知義務の対象外。