難易度・正答率・重要度
- 難易度:★★★★☆(英文契約と貿易条件の理解が必要)
- 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
- 重要度:★★★★☆(国際取引の基本知識として重要)
問題文
中小企業診断士であるあなたと株式会社Xの代表取締役甲氏との間の以下の会話を読んで、下記の設問に答えよ。
甲氏:「弊社は、現在、自社ブランド製品について、外国の販売業者と取引を開始しようと考えています。先方から届いた契約書案を検討しているのですが、以下の規定について教えてください。」
Title & Risk
Risk of loss of the Products sold by Seller under this Agreement shall pass to Purchaser upon Purchaserʼs acceptance of delivery of the same at the Designated Delivery Site, and title of the Products shall pass to Purchaser only upon full payment therefor.
あなた:「この規定は、危険負担と所有権の移転に関する条項です。このうち、Aについては、Bに移転するものと定められています。また、Cについては、Dに移転するものと定められています。なお、Cについては、貿易取引条件の解釈の誤解や行き違いを回避する目的で、国際商業会議所が制定したインコタームズという規則がありますので、それによることも考えられます。」
(設問1)
会話の中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
(設問2)
会話の中の下線部に関連して制定された「海上および内陸水路輸送のための規則」のうち、CIFの説明として、最も適切なものはどれか。
出典:中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)
解答
設問1:ウ
設問2:イ
解説
【設問1】
ア:×
危険負担が代金支払時に移転するというのは契約文の内容と一致しない。通常、危険負担は引渡時に移転するのが一般的である。
イ:×
所有権が代金支払時に移転する点は正しいが、危険負担の移転時点が逆である。契約文では危険負担が引渡時に移転すると明記されている。
ウ:〇
契約文において「危険負担は引渡時に移転」「所有権は代金支払時に移転」と明記されているため、この選択肢が正しい。英文契約では、危険負担と所有権の移転時点が異なることがある。
エ:×
所有権が引渡時に移転するというのは契約文と矛盾する。危険負担と所有権の移転時点が逆転しており、誤りである。
【設問2】
ア:×
「運賃込み」はCFRなどの条件に該当するが、CIFには保険料も含まれる。記述が不十分である。
イ:〇
CIF(Cost, Insurance and Freight)は、売主が運賃と保険料を負担する条件である。輸送中のリスクに備える保険料が含まれる点が特徴であり、国際商業会議所が定めたインコタームズの代表的な条件の一つである。
ウ:×
「船側渡し」はFAS(Free Alongside Ship)に該当し、CIFとは異なる条件である。誤りである。
エ:×
「本船渡し」はFOB(Free On Board)に該当する。CIFとは異なる条件であり、記述は不適切である。
学習のポイント
- 英文契約では、危険負担と所有権の移転時点が明示されることが多く、両者は一致しない場合がある。
- 危険負担は通常「引渡時」、所有権は「代金支払時」に移転することが多い。
- CIFは運賃と保険料を含む価格条件であり、売主が輸送中のリスクに備える保険を手配する。
- インコタームズは国際取引における誤解や紛争を防ぐための標準化ルールであり、契約書と併用される。