過去問解説(経営法務)_2019年(R1年) 第18問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(担保物権の性質と効力範囲の理解が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★★☆(民法・担保法の基本構造として頻出)

問題文

担保物権のうち、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対して、担保物権を行使することができないものとして、最も適切なものはどれか。


先取特権
質権
抵当権
留置権

出典:中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:エ
留置権は、目的物の売却・賃貸・滅失・損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対して、担保物権を行使することができない。


解説

ア:×
先取特権は、法律上の定めにより、特定の債権について他の債権者に先立って弁済を受けることができる担保物権である。債務者が受ける金銭に対しても効力が及ぶ場合がある。

イ:×
質権は、目的物を占有することで成立し、目的物の代替物や損害賠償請求権などにも一定の範囲で効力が及ぶ。したがって、金銭その他の物に対しても担保権を行使できる場合がある。

ウ:×
抵当権は、目的物が滅失した場合でも、代替物や保険金請求権などに対して効力が及ぶ。物上代位が認められるため、金銭その他の物に対しても担保権を行使できる。

エ:〇
留置権は、目的物を占有することで成立するが、その効力は目的物自体に限定される。目的物の売却・滅失・損傷によって債務者が受ける金銭その他の物には効力が及ばない。物上代位の制度がないため、担保権を行使することはできない。


学習のポイント

  • 留置権は目的物の直接的占有に基づく担保物権であり、代替物や金銭には効力が及ばない。
  • 物上代位が認められる担保物権(抵当権・質権など)は、目的物の代替物にも効力が及ぶ。
  • 先取特権は法律上の優先弁済権であり、金銭債権に対しても効力が及ぶ場合がある。
  • 担保物権の効力範囲は、物上代位の有無によって大きく異なる。