過去問解説(経営法務)_2019年(R1年) 第20問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(債権譲渡の対抗要件と相殺の理解が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★★☆(民法改正後の債権譲渡実務に直結)

問題文

債権譲渡に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。


AがBに対する指名債権を二重譲渡した場合において、Cへの債権譲渡に係る通知の確定日付が2019年7月23日、Dへの債権譲渡に係る通知の確定日付が同月24日であり、債務者であるBに当該通知が到達したのが、前者は同月26日、後者は同月25日であったときは、債務者Bは、Cに対して弁済をする必要がある。
指名債権の譲渡の対抗要件としての債務者の承諾は、譲渡人又は譲受人のどちらに対してしても、有効である。
指名債権の譲渡の通知以前に、弁済期の到来している反対債権を有していた場合でも、譲渡の通知後においては相殺することができない。
指名債権の譲渡は、譲受人が譲渡人に代位して債務者に通知をすることによっても、債務者に対抗することができる。

出典:中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:イ
指名債権の譲渡の対抗要件としての債務者の承諾は、譲渡人又は譲受人のどちらに対してしても、有効である。


解説

ア:×
債権譲渡の優劣は、通知または承諾に確定日付が付された順序によって決まる。到達日ではなく、確定日付の早い方が優先されるため、債務者BはCではなくDに弁済すべきである。記述は誤りである。

イ:〇
債務者の承諾は、譲渡人に対して行っても、譲受人に対して行っても、対抗要件として有効である。承諾の相手方は限定されておらず、いずれに対しても効力が認められる。

ウ:×
譲渡通知以前に反対債権が存在していれば、譲渡後であっても相殺することができる。通知の有無にかかわらず、相殺の可否は反対債権の発生時点によって判断される。

エ:×
譲受人が譲渡人に代位して通知を行うことはできない。通知は譲渡人から債務者に対して行う必要があり、譲受人が通知しても対抗要件を満たさない。記述は誤りである。


学習のポイント

  • 債権譲渡の対抗要件は、債務者への通知または債務者の承諾であり、確定日付の有無が優劣を決する。
  • 承諾の相手方は譲渡人でも譲受人でもよく、形式的な制限はない。
  • 相殺の可否は、反対債権の発生時点が基準であり、通知の前であれば譲渡後でも相殺可能。
  • 通知は譲渡人から債務者に対して行う必要があり、譲受人による通知は対抗要件を満たさない。