過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第5問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(複数知識の統合や誤答肢の吟味が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★★☆(頻出論点。買収防衛策の基本理解に直結)

問題文

他社からの買収に対応する企業Aの行動に関する記述として、最も適切なものはどれか。


「ゴールデンパラシュート」を導入し、経営陣が既存株主から自社の株式を直接購入して上場を廃止しようとする。
自社の重要な資産をあらかじめ売却する「サメ除け」を行う。
買収企業が保有する企業Aの株式を、市場価格よりも高い価格で全て買い取ろうとする「パックマン戦法」を行う。
買収企業による企業Aの株式の大量買付に備えて、買収企業以外の既存株主が新株を市場価格より安く取得できるなどの権利を事前に与える「ポイズンピル」を導入する。
買収企業を逆に買収しようとする「ホワイトナイト」を探す。

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:✕
 ゴールデンパラシュートは、敵対的買収成立時に経営陣へ多額の退職金等を支払う取り決めであり、経営陣が株式を買い取り上場廃止する行為(MBO)を指すものではない。

イ:✕
 サメ除けは定款変更や取締役任期の短縮など、買収を困難にする制度的仕組みを事前に導入する策であり、重要資産の売却を意味しない。資産売却は「クラウンジュエル防衛」に近い。

ウ:✕
 パックマン戦法は、標的企業が逆に買収企業へ対抗買収を仕掛ける戦術であり、相手の保有する自社株を高値で買い取ることではない。

エ:〇
 ポイズンピルは、買収企業以外の株主に新株取得権等を付与し、買収企業の持分を希薄化させ買収コストを増大させることで敵対的買収を抑止する代表的な防衛策である。

オ:✕
 ホワイトナイトは、友好的な第三者に買収を依頼する防衛策であり、買収企業を逆に買収するものではない。


学習のポイント

  • 買収防衛策は名称と仕組みを正確に対応させることが重要。特に「サメ除け」「クラウンジュエル」「ポイズンピル」の混同に注意。
  • ポイズンピルは日本でも導入事例が多く、株主平等原則との関係が議論されるなど実務的にも重要な制度。
  • 誤答肢は他の防衛策の定義を意図的に混ぜているため、各戦術の特徴(誰に権利を与えるか、何を変更するか、誰を巻き込むか)を整理して覚えると効果的。