過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第9問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(誤答肢の吟味が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★☆☆(頻出ではないが、学習価値が高い)

問題文

W. アバナシーと J. アッターバックによって提唱された産業発展の段階とイノベーションのモデル(A-Uモデル)に関する記述として、最も適切なものはどれか。


ある製品について、使用状況、仕様、評価基準が顧客の間で共有されるようになると、ドミナントデザインが定まってくる。
生産者の評価基準は、工程イノベーションが主流になると、コストから製品の新規性に移っていく。
製品そのものや、それを背後で支える各種の要素技術の進歩をもたらす製品イノベーションは、ドミナントデザインが生じた後により多く現れる。
ドミナントデザインが出現すると、機械的組織よりも有機的組織が、その産業において増えていく。
ドミナントデザインが出現すると、製品イノベーションも工程イノベーションも活発化する。

出典:中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:〇
 顧客側で利用状況や仕様・評価基準が共有されるにつれ、製品の設計が標準化へ収斂し、ドミナントデザインが形成される。

イ:✕
 工程イノベーションが主流になる段階では、評価基準は新規性からコスト・効率へと移るのが一般的であり、記述は逆。

ウ:✕
 ドミナントデザイン出現後は製品イノベーションの頻度が低下し、工程イノベーションが比重を増す。

エ:✕
 標準化・効率重視の成熟段階では、機械的(メカニスティック)組織が増える傾向にあり、有機的組織が増えるとは言い難い。

オ:✕
 ドミナントデザイン後は製品イノベーションは減速し、工程イノベーションが活発化するため、両方が活発化するわけではない。


学習のポイント

  • A-Uモデルは「製品イノベーション優位(初期)→ドミナントデザイン出現→工程イノベーション優位(成熟)」の推移を捉える。
  • ドミナントデザインは市場側の評価基準の共有・収斂によって生じ、標準化と効率化の圧力を高める。
  • 組織は初期は柔軟で有機的、成熟では規則・手順重視の機械的へ移行しやすい。