過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第12問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(用語の定義差を正確に把握)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的)
  • 重要度:★★★★☆(ESG・サステナビリティの基礎用語は頻出)

問題文

企業の社会的責任やESG投資に関する記述として、最も不適切なものはどれか。


「インパクト投資」とは、測定可能かつポジティブなインパクトを社会および環境に生み出す企業に、経済的リターンを求めず投資することである。
「統合報告書」には、企業の売上高や資産などのような従来の財務諸表で記載されている内容に加えて、温室効果ガスの排出量、有給休暇の取得率、経営者報酬の決め方などが記載される。
CSVとは、経済的価値を創造しながら、社会課題に対応することで社会的価値も同時に創造するアプローチである。
環境・社会問題への取り組みが十分でないと思われる企業の株式や債券を売却することによって、投資家が企業に圧力をかけることを「ダイベストメント」と呼ぶ。
環境に対して適切な対応をしているように見せて、実態は二酸化炭素を多く排出しているような企業を「グリーンウォッシュ」と呼ぶ。

出典: 中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ア


解説

ア:✕
 インパクト投資は、社会的・環境的インパクトを意図しつつ「財務的リターン」も追求する投資。経済的リターンを求めないのは寄付や慈善活動に近く、定義と異なる。

イ:〇
 統合報告書は財務・非財務を統合し、中長期の価値創造を示す。温室効果ガス排出量、人材関連指標(有休取得率など)、ガバナンス(報酬方針など)を含む。

ウ:〇
 CSV(Creating Shared Value)は、社会課題対応と経済的価値創造を同時に追求するアプローチ。

エ:〇
 ダイベストメントは、環境・社会面で不十分な企業から資金を引き揚げることで圧力をかける投資行動。

オ:〇
 グリーンウォッシュは、環境配慮を装い実態が伴わない行為を指す。


学習のポイント

  • インパクト投資の定義
    社会的・環境的インパクト+財務的リターンの両立が本質。寄付や慈善活動と混同しない。
  • 統合報告の役割
    財務+非財務情報を統合し、環境(GHG)、社会(人材・多様性)、ガバナンス(報酬・取締役会)を含めて中長期の価値創造を示す。
  • 投資アプローチの違い
    ダイベストメント=資金引揚げ、CSV=価値共創、グリーンウォッシュ=虚偽的環境配慮。誤答肢はこれらの混同を狙っている。