過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第16問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(動機づけ理論の基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(人事・組織の定番論点)

問題文

動機づけ理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。


期待理論では、職務成果と報酬とのつながりが明確な場合に報酬の魅力度が高まりやすいことを根拠として、人事評価制度の透明性が仕事に対する従業員のモチベーションを高めると考える。
公平理論では、従業員間で報酬に関する不公平感が生まれないように公正に処遇することで、仕事の量と質を現状よりも高めるように従業員を動機づけられると考える。
動機づけ・衛生理論(二要因理論)では、職場の物理的な作業条件を改善することは、仕事に対する従業員の不満を解消するための方法として有効ではないと考える。
D.C.マクレランドの欲求理論では、達成欲求の高い従業員は、成功確率が低く挑戦的な目標よりも、成功確率が中程度の目標の方により強く動機づけられると考える。
D.マグレガーが「X理論」と命名した一連の考え方では、人間は生来的に仕事が嫌いで責任回避の欲求を持つため、やりがいが強く感じられる仕事を与えて責任感を育てる必要があると考える。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
 期待理論は「期待(努力→成果)」「道具性(成果→報酬)」「誘意性(報酬の魅力度)」の積で動機づけを説明する。透明性は道具性を高めるが、誘意性(魅力度)は個人の価値判断であり直接は高めない。

イ:×
 公平理論は「投入/結果」の比率比較で不公平感を低減する枠組み。公正は不満や逸脱行動を抑えるが、必ずしも量・質を現状以上へ高める動機づけになるとは限らない。

ウ:×
 二要因理論では作業条件など衛生要因の改善は「不満の解消」に有効。ただし満足や積極的動機づけは達成・承認などの動機づけ要因による。

エ:〇
 マクレランド理論では達成欲求の高い人は成功確率が中程度(約50%)の挑戦に最も強く動機づけられる。難しすぎても易しすぎても動機づけは弱まる。

オ:×
 X理論は人間は仕事を嫌い統制や罰が必要とする見方。やりがいで責任感を育てるのはY理論の発想。


学習のポイント

  • 期待理論(Vroom)
    期待・道具性・誘意性の3要素の積で動機づけが決まる。透明な評価は道具性を高めるが、誘意性は個人の価値に依存。
  • 公平理論(Adams)
    他者との投入/結果比を比較し、過少報酬・過大報酬の不公平に反応する。公正は不満低減に寄与。
  • 二要因理論(Herzberg)
    衛生要因は不満を減らし、動機づけ要因が満足・意欲を高める。両者を区別して設計する。
  • マクレランドの欲求理論
    達成・権力・親和の3欲求。高達成者は中程度難易度の目標に最も動機づけられる。
  • マグレガーのX・Y理論
    X=統制・監督を前提。Y=自律と自己実現を前提。施策の方向性を取り違えない。