過去問解説(企業経営理論)_2024年(令和6年) 第39問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(基礎用語の正誤)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(リサーチ設計の基本)

問題文

マーケティング・リサーチに関する記述として、最も適切なものはどれか。


サーベイ法では、間隔尺度、序数尺度、比例尺度、名義尺度によってデータが収集される。このうち、調査対象者の選択した回答番号が数字としての意味を持たず、回答番号の違いが単に対象者の質的な違いを分類するだけの意味を持つ尺度は間隔尺度である。
自社ビールの売上が落ちてきている原因の1つとして「テイストが軽すぎる」という仮説が立てられた場合、自社ビールのテイストに関する消費者データを収集して分析し、仮説を明らかにしようとする調査をインサイト・リサーチと呼ぶ。
消費者の発言データは、コーディングにより頻度を算出したり、コード間の結びつきを図示したりするなどして解釈が行われる。データの解釈では、分析者の主観を排除し、客観的に結果を示すことが重視される。
データ収集において、リサーチ対象となる母集団の全てを対象に調査を実施する全数調査に対し、母集団の一部を標本として抽出して調査を実施する悉しっ皆かい調査では、母集団の属性を反映した標本を抽出することが重視される。
マーケティング・リサーチで収集および利用されるデータの中で、自社の売上や顧客情報といったすでに社内に蓄積された内部データは一次データに該当し、他の組織が収集した外部データは二次データに該当する。

出典: 中小企業診断協会|2024年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 名義尺度が「番号に数量的意味がなく、質的な違いの分類のみ」を表す尺度。間隔尺度は差の大きさに意味があり、平均算出などが可能。

イ:×
 仮説検証のためのデータ収集・分析は検証的調査であり、「インサイト・リサーチ」は潜在欲求の探索など発見的・探索的調査を指すのが一般的。

ウ:〇
 質的データはコーディングで構造化し、頻度・関係性を可視化して解釈する。主観を抑えるためのコードブック整備や複数コーダーによる信頼性確保が重視される。

エ:×
 「悉皆調査」は母集団全数を対象とする調査。標本抽出と母集団属性の反映を重視するのは標本調査(サンプルサーベイ)。記述が逆。

オ:×
 一次データは特定目的のため新たに収集したデータ。社内に既存蓄積された内部データは二次データ(既存データ)として扱われるのが一般的。


学習のポイント

測定尺度の理解
 名義/序数/間隔/比例の違いと、分析可能な統計処理の範囲を整理する

探索と検証の区別
 探索的(インサイト発見)と検証的(仮説テスト)を設計目的で使い分ける

質的分析の客観性確保
 コードブック、相互信頼性、トライアングレーションで主観を最小化する

調査方式の用語整理
 悉皆調査=全数、標本調査=抽出。目的とコストで最適方式を選ぶ

一次/二次データの取り扱い
 目的適合性・鮮度・コスト・入手容易性を踏まえ、活用と限界を見極める