過去問解説(企業経営理論)_2023年(令和5年) 第9問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(定義の正誤)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(イノベーション基礎)

問題文

企業におけるイノベーションには外部からの知識が欠かせない場合が多い。イノベーションのプロセスにおいて重要とされる吸収能力(absorptive capacity)に関する記述として、最も適切なものはどれか。


多くの企業にとって、吸収能力を高めることが研究開発投資の最大の目的である。
企業の吸収能力は、新しい知識やスキルを組織内部のメンバーに共有させる組織能力であり、組織内の個人が保有する既存の知識とは関係がない。
企業の吸収能力は、個々の構成メンバーの吸収能力に大きく左右されるため、個人の吸収能力の総和と考えられる。
吸収能力とは、既存知識によって新しい情報の価値に気付き、それを活用する能力である。
吸収能力は、研究開発部門に特有の能力である。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
 R&D投資の目的は新知識の創出・製品化など広く、吸収能力の向上は目的の一部に過ぎない。

イ:×
 吸収能力は既存知識の蓄積が前提。関連知識があるほど新情報の価値認識・同化・活用が進む。

ウ:×
 企業の吸収能力は個人の総和ではなく、組織構造・プロセス・コミュニケーション設計にも依存する。

エ:〇
 既存知識を土台に外部情報の価値を認識し、同化・活用する能力という定義に合致する。

オ:×
 R&Dに限定されず、マーケ・製造・アライアンスなど全社的に関わる能力である。


学習のポイント

定義の中核
 既存知識を土台に「認識(価値を見抜く)→同化→活用」までを含む能力が吸収能力。

前提となる既存知識
 近接領域の知識蓄積があるほど外部知識の取り込み効率が上がる(遠すぎると認識が難しい)。

組織設計の重要性
 探索・共有・学習のプロセスや越境チーム、ナレッジマネジメントが能力を押し上げる。

試験対策のコツ
 「個人の総和」「R&D限定」「既存知識と無関係」といった断定は誤りと判断しやすい。