過去問解説(企業経営理論)_2023年(令和5年) 第12問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(国際化類型の正誤)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(組織類型と戦略の対応)

問題文

企業活動のグローバルな展開が進んでいる。企業の国際化に関する記述として、最も適切なものはどれか。


C. バートレットと S. ゴシャールによれば、トランスナショナル戦略を追求する多国籍企業の中核となる資産や能力は、主に企業の本国において存在しており、他の国や地域における開発は不可能である。
C. バートレットと S. ゴシャールによれば、マルチナショナル企業はグローバル企業に比べて、個々の地域や市場への適応の度合いが高いため、国別の現地法人の自主性や独立性が高いという特徴を有する。
J. ストップフォードと L. ウェルズのモデルによれば、一般的な企業の国際化の進展経緯は、地域別事業部制から製品別事業部制へ移行した後、グローバル・マトリックス組織形成に向かう。
R. バーノンは、米国の大企業の海外進出過程を分析し、製品ライフサイクルの進展に伴う発展途上国から先進国への生産拠点移転現象をモデル化した。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 トランスナショナル戦略は「本国集中」ではなく、知識・能力をグローバルに分散配置し相互連結する発想。現地でも中核能力を創出・活用するため、「他国での開発は不可能」は誤り。

イ:〇
 マルチナショナル企業は各国子会社の自律性が高く、現地適応を重視。グローバル企業は統合・標準化を重視するため、記述は適切。

ウ:×
 ストップフォード=ウェルズは製品多様性×海外売上比率で組織形態(国際部→世界製品別/地域別→マトリックス)を示すが、「一般的進展が地域別→製品別→マトリックス」と断定するのは不正確。

エ:×
 バーノンの製品ライフサイクル論では、先進国でイノベーション→他の先進国へ生産移転→成熟後に発展途上国へ移転が典型。記述の「途上国→先進国」は逆。


学習のポイント

類型の対比
 グローバル企業=統合・標準化、マルチナショナル=現地自律・適応、トランスナショナル=統合と適応の両立

SWモデルの読み方
 製品多様性と海外売上比率の組み合わせで、国際部→世界製品別/地域別→マトリックスへと「適合的に」選択される

バーノンのPLC
 技術生誕は先進国、成熟で他先進国へ、標準化後に途上国へ生産移転が進む(コスト優位の追求)

試験対策のコツ
 「唯一のパス」「不可能」「逆方向」などの強断定は誤りを疑う。文脈の整合で判断する