過去問解説(企業経営理論)_2023年(令和5年) 第22問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★☆☆☆(同型化の種類の区別)
  • 正答率:★★★★☆(正答率70%以上)
  • 重要度:★★★☆☆(制度理論の基礎)

問題文

組織における制度的同型化に関する記述として、最も適切なものはどれか。


ある組織形態が社会的に高い評価を得ている場合には、その組織形態を採用しなければ取引関係にある組織から批判されることから、強制的同型化が生じやすくなる。
環境が安定的であり、どのようにすれば社会から評価されるかが明確であれば、模倣的同型化が生じやすくなる。
政府が特定の組織形態を採用することを求める規制を行えば、制度的環境からの期待が明示的になって競争が緩和されるため、模倣的同型化が生じやすくなる。
専門家団体のような組織横断的な専門家ネットワークが発達することにより、規範的同型化が生じやすくなる。
取引関係にある組織同士は、資源を相互に依存しあっているために、それらの組織間では規範的同型化が生じやすくなる。

出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:エ


解説

ア:×
 強制的(コアーシブ)同型化は、政府規制や強い依存関係に基づく「権力・法的強制」によって生じる。社会的評価の高さや取引先の「批判」だけでは、むしろ模倣的・規範的圧力の説明に近い。

イ:×
 模倣的(ミメティック)同型化は、不確実性や曖昧さが高いときに、成功事例をまねることで生じる。環境が安定で評価基準が明確なら模倣圧力は弱まる。

ウ:×
 政府の明示的な規制は、模倣ではなく強制的同型化の典型。規制により採用が義務化される。

エ:〇
 専門家ネットワークや職能団体の発達は、教育・資格・職業規範の共有を通じて規範的(ノーマティブ)同型化を促進する。

オ:×
 資源の相互依存は、依存関係に基づく強制的同型化(取引条件・契約・支配)の要因になりやすい。規範的同型化の説明としては不適切。


学習のポイント

同型化の三類型
明示的な権力・法規制=強制的、環境の不確実性下の成功事例模倣=模倣的、専門職の規範共有・教育制度=規範的。

圧力の源泉
法律・政府・強い取引依存は強制的、曖昧さ・不確実性は模倣的、専門家ネットワーク・資格制度は規範的。

誤りパターンの見抜き方
「規制→模倣」「相互依存→規範」といった取り違えに注意。圧力の性質(法的強制か、不確実性か、職業規範か)で分類する。