難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★★☆☆(流通チャネルとD2Cの基礎)
- 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(マーケティングチャネル論)
問題文
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
食品メーカーA社では、これまで①卸売業者や小売業者を介した間接流通チャネルと電子商取引を用いてきた。近年は多くの食品メーカーが ②D2C に乗り出しており、この動きにどのように対応するかも1つの課題であると考えている。
(設問1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
(設問2)
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
出典:中小企業診断協会|2023年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
- 設問1:イ
- 設問2:イ
解説(設問1)
ア:×
メーカーが零細であるほど、卸売の中継・集約・標準化機能はむしろ重要になりやすく、卸の役割や段階が縮小するとは限らない。
イ:〇
小売が分散・零細な市場では、メーカーと多数の小売を橋渡しするために卸売が多段階化し、数も増える傾向がある。
ウ:×
卸売は「最終消費者以外への再販売」であり、メーカーの販社による小売業者向け販売は卸売に該当する。卸売ではないという記述は誤り。
エ:×
小売は最終消費者への再販売、卸売は小売・卸・産業用使用者など「事業者」への再販売であり、最終消費者は卸売の対象に含まれない。
オ:×
3PLは「外部の物流専門業者への委託」を指す概念。卸売業者が自社の物流機能を強化する施策を3PLと一般呼称するのは不適切。
解説(設問2)
ア:×
D2Cは中間を介さず「自社主導の直接販売」が核で、プラットフォーム依存のモール販売は純粋D2Cとは異質になりやすい。
イ:〇
D2Cの潮流は、独自サイトとSNSで世界観を発信し、顧客接点を育てつつ直接販売して成長した米国発の事例に端を発する。SNS活用は代表的特徴。
ウ:×
D2Cに必ずしも自社単独開発は不要。EC、CRM、決済はSaaSや外部サービスで構築可能で、スピードと学習が重視される。
エ:×
メーカー直販はチャネル競合を招くことがあり、卸・小売の支持を得つつ拡大したという一般化は不適切。両立の是非は業界構造や政策次第。
学習のポイント
- 卸売の機能(集約・標準化・物流)
零細なメーカー・小売が多い市場ほど、卸は取引コストを下げる中継機能を発揮しやすく、段階が厚くなる。 - 卸売と小売の定義の線引き
卸売は事業者への再販売、小売は最終消費者への再販売。メーカー販社の対小売販売は「卸売」に当たる。 - 3PLの正確な意味
物流機能の「外部委託」を指し、卸が自社物流を強化する施策そのものを3PLとは呼ばない。 - D2Cの起源と特徴
自社サイトとSNSを核に世界観を構築し、顧客関係を直接育成して販売するモデル。プラットフォーム依存とは異なる。 - D2Cの実装手段
自社開発に限定されず、SaaSや外部サービスを組み合わせて迅速に立ち上げるのが一般的。