過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第5問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(M&Aの基礎知識)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(企業戦略・防衛策の理解)

問題文

M&A(企業の合併・買収)に関する記述として、最も適切なものはどれか。


TOB とは、買収コストを充足するために、買収する企業の資産や買収後のキャッシュフローを担保として借入金を調達し、企業買収を行う手法である。
黄金株とは、会社の合併などの重要な決議事項について、株主総会で拒否権を行使できる株式であり、敵対的買収に対する防衛策となる。
カーブアウトとは、敵対的買収の対象となる企業の経営者が、買収される前に会社の魅力的な資産を売却して、敵対的買収の意欲を削ぐ買収防衛策である。
コントロール・プレミアムとは、企業の経営陣が企業の所有者から株式などを買い取り、経営権を取得することで生じる1株当たりの価値の上昇分を指す。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:イ


解説

ア:×
 TOB(Take Over Bid)は「株式公開買付け」のこと。市場外で不特定多数の株主から一定価格で株式を買い取る手法。設問の説明は「LBO(Leveraged Buyout)」の内容であり誤り。

イ:〇
 黄金株(ゴールデン・シェア)は、合併など重要事項に対して拒否権を持つ特別な株式。敵対的買収防衛策として利用される。

ウ:×
 カーブアウトは、企業の一部事業を分離・売却して資金調達や事業再編を行う手法。買収防衛策ではなく、事業ポートフォリオ戦略の一環。

エ:×
 コントロール・プレミアムとは、経営権を取得するために株式市場価格に上乗せして支払う金額。設問の説明はMBO(Management Buyout)の内容に近い。


学習のポイント

  • TOB(株式公開買付け)
    不特定多数の株主から市場外で株式を買い取る手法。敵対的買収や友好的買収の場面で用いられる。
  • LBO(レバレッジド・バイアウト)
    買収対象企業の資産や将来キャッシュフローを担保に借入を行い、買収資金を調達する手法。
  • 黄金株(ゴールデン・シェア)
    特定の株主に拒否権を与える株式。重要決議に対する拒否権を持ち、防衛策として機能する。
  • カーブアウト
    企業の一部事業を切り出して売却・上場する手法。資金調達や事業集中のために行われる。
  • コントロール・プレミアム
    経営権を取得するために、市場価格に上乗せして支払う株式の追加価値。M&Aの評価において重要な概念。