過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第6問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★☆☆☆☆(垂直統合の基礎)
  • 正答率: ★★★★★(正答率80%以上)
  • 重要度: ★★★☆☆(チャネル戦略の基本)

問題文

ある企業では、近隣農家からブドウを仕入れて、仕入れたブドウだけを使って自社でワインを製造し、製造したワイン全量を近隣の酒販店に卸売りしている。この企業の垂直統合に当たる行動として、最も適切なものはどれか。


近隣農家からの仕入れが不安定であることの対策として、ブドウが収穫される半年前に仕入価格を決定し、その価格で買い取ることにした。
販売戦略を見直し、製造したワイン全量を近隣の酒販店に販売することを止めて、製造したワインの半分を遠方の酒販店に販売することにした。
販売戦略を見直し、製造したワインの一部を自社で運営する Web サイトで消費者に直接販売することにした。
ワインケーキ需要の拡大を受けて、自社で製造したワインをワインケーキの製造業者に原料として販売することにした。
ワイン需要が堅調なことを受けて、近隣農家からのブドウの仕入れを増やし、生産能力向上のための設備投資を行った。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:ウ


解説

ア:×
 価格の事前決定は調達契約の工夫であり、供給の安定化策。工程の統合(生産・流通段階の内部化)ではない。

イ:×
 卸先の地理的変更であり、チャネルの再配分。垂直統合(段階の内部化)には該当しない。

ウ:〇
 自社サイトで消費者へ直接販売するのは、卸売段階を内部化する前方統合(下流統合)。垂直統合の典型例。

エ:×
 原料販売の顧客を広げただけで、流通段階の内部化ではない。取引先の多角化に過ぎない。

オ:×
 仕入量増加や設備投資は規模拡大(水平的な能力増強)。垂直統合ではない。


学習のポイント

  • 垂直統合の定義
    サプライチェーンの上流(原材料・調達)や下流(流通・販売)工程を自社内に取り込むこと。
  • 前方統合(下流統合)
    卸・小売・直販など顧客への到達工程を内部化し、チャネル支配力や顧客接点を強化する。
  • 後方統合(上流統合)
    原材料調達や一次加工など上流工程を内部化し、供給安定やコスト・品質管理を強化する。
  • 統合と非統合の違い
    価格・契約変更や販路拡大は「統合」ではなく、既存外部工程のまま取引条件を変える施策。