過去問解説(企業経営理論)_2022年(令和4年) 第17問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度: ★★☆☆☆(組織行動論の基礎)
  • 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
  • 重要度: ★★★☆☆(組織政治の理解)

問題文

組織における政治的行動を「公式の役割の一部として求められるものではないが、組織における利益と不利益の分配に影響を及ぼす、もしくは影響を及ぼそうと試みる諸活動」と定義する場合、組織における政治的行動に関する記述として、最も不適切なものはどれか。


経営幹部層が自己利益を追求して政治的駆け引きを行うことは、そうした行動が組織内で許容されることを従業員に暗示することで、政治的行動を助長する組織風土を醸成しやすい。
経営資源の配分パターンの再編を伴う組織変革において、既得権益を失う恐れのある従業員は、自己防衛のための政治的行動に動機づけられる傾向がある。
従業員に公式に与えられた役割が曖昧であり、従業員の行動についての規定が明確でない場合、従業員が政治的行動に従事できる余地は大きくなる。
従業員の昇進を巡る意思決定のプロセスでは、限られた昇進の機会を巡って、自らに有利な決定が下されるように影響力を及ぼそうとする政治的行動が従業員間で生じやすい。
組織において報酬を従業員に分配する場合に、ゼロサムの分配基準を用いると、従業員間での勝ち負けが曖昧になるので、従業員は政治的行動に動機づけられやすくなる。

出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)


解答

正解:オ


解説

ア:〇
 経営幹部が自己利益を優先する姿勢は、組織全体に「政治的行動が許容される」というシグナルを与え、風土を助長する。

イ:〇
 組織変革で既得権益を失う恐れがある従業員は、防衛的に政治的行動をとる傾向が強まる。

ウ:〇
 役割や規定が曖昧な場合、裁量の余地が広がり、政治的行動の余地も大きくなる。

エ:〇
 昇進のように希少な機会を巡る意思決定では、従業員が政治的行動をとりやすい。

オ:×
 ゼロサム分配では勝ち負けが明確になるため、政治的行動が誘発されやすい。設問の「曖昧になる」という記述は誤り。


学習のポイント

  • 組織政治の定義
    公式役割には含まれないが、利益・不利益の分配に影響を与える行動。
  • 政治的行動が生じやすい条件
    ・資源が希少である
    ・役割や規定が曖昧である
    ・意思決定が不透明である
    ・組織変革や昇進など利害が絡む場面
  • ゼロサム状況の特徴
    勝者と敗者が明確になるため、政治的行動が強く誘発される。
  • 試験対策のコツ
    「曖昧さ」「希少資源」「既得権益」「昇進競争」などは政治的行動を促す要因。ゼロサムで「曖昧になる」とする記述は誤り。