難易度・正答率・重要度
- 難易度: ★★☆☆☆(組織生態学の基礎)
- 正答率: ★★★★☆(正答率70%前後)
- 重要度: ★★★☆☆(組織理論の周辺知識)
問題文
共通の組織形態を持つ組織個体群と環境の関係を分析する理論に、個体群生態学モデル(population ecology model)がある。このモデルは組織個体群の変化を、「変異(variation)-選択・淘汰(selection)-保持(retention)」という自然淘汰モデルによって説明する。個体群生態学モデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア
既存の組織形態を保持しようとする力が強ければ、新たな組織形態が生まれる可能性は低くなる。
イ
個体群生態学モデルでは、環境の変化に対して自らの組織形態を柔軟に変化させて対応できる組織群が選択され、長期にわたって保持されることを示唆する。
ウ
組織内の部門が緩やかな結合関係にある場合、変異が生じる可能性が高くなるが、保持されている既存の組織形態の存続の可能性は高くなる。
エ
変異段階で新たに生まれる組織個体群は、既存の組織から派生してくるケースは少なく、独立した企業者活動を通じて生み出される。
オ
変異によって生まれた組織個体群は、政府などによる規制や政策によって選択・淘汰されるが、規制が緩和されれば保持される組織形態の多様性は減少する。
出典:中小企業診断協会|2022年度 第1次試験問題|企業経営理論(PDF)
解答
正解:ア
解説
ア:〇
個体群生態学モデルでは、組織は環境に適応して柔軟に変化するのではなく、環境による淘汰を受ける存在とされる。既存形態を保持する力(制度的慣性)が強いほど、新しい組織形態の誕生は抑制される。
イ:×
環境変化に柔軟に対応できる組織が生き残るとするのは「適応論的視点」。個体群生態学はむしろ「淘汰論的視点」であり、組織は容易に変化できないとする。
ウ:×
緩やかな結合は変異を生みやすいが、既存形態の存続可能性が高まるとは言えない。淘汰圧は依然として環境側にある。
エ:×
新しい組織形態は、既存組織からの派生(スピンオフ)も多い。独立した企業者活動だけに限定されない。
オ:×
規制緩和は多様性を減少させるのではなく、むしろ多様性を拡大させる方向に働く。
学習のポイント
- 個体群生態学モデルの基本
組織は「変異-選択-保持」の自然淘汰プロセスで変化する。 - 制度的慣性(structural inertia)
組織は構造的に変化しにくく、環境に適応するより淘汰されやすい。 - 適応論 vs 淘汰論
・適応論:組織は柔軟に変化して環境に適応する。
・淘汰論(個体群生態学):組織は変化しにくく、環境に合わない組織は淘汰される。 - 新形態の誕生
新規創業だけでなく、既存組織からのスピンオフも重要な変異源。 - 試験対策のコツ
「環境適応=適応論」「淘汰=個体群生態学」と整理して区別する。