過去問解説(経営法務)_2019年(R1年) 第17問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(共有物の管理・処分・訴訟に関する理解が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★★☆(民法の基本構造として頻出)

問題文

共有に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。


共有不動産の所有権確認の訴えを提起するには、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決しなければならない。
共有不動産の不法占有者に引渡を請求する場合、各共有者がそれぞれ単独でできる。
共有不動産を妨害する者に損害賠償を請求する場合、他の共有者の持分についてもすることができる。
共有不動産を目的とする賃貸借契約の解除をするには、他の共有者全員の同意を得なければならない。

出典:中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:イ
共有不動産の不法占有者に引渡を請求する場合、各共有者がそれぞれ単独でできる。


解説

ア:×
所有権確認訴訟は、共有物に対する権利の確認を求めるものであり、共有者の一人が単独で提起することができる。持分の過半数による決議は不要である。

イ:〇
共有物に対する不法占有者への引渡請求は、共有者の持分に基づく権利行使であり、各共有者が単独で行使できる。共有者全員の同意は不要である。

ウ:×
損害賠償請求は、自己の持分に基づいて行うものであり、他の共有者の持分については請求できない。他人の権利に基づく請求は原則として認められない。

エ:×
賃貸借契約の解除は、共有物の処分に該当するため、原則として共有者全員の同意が必要である。単独で解除することはできない。


学習のポイント

  • 共有物に対する権利行使は、管理行為か処分行為かで要件が異なる。
  • 不法占有者への引渡請求は、管理行為に該当し、共有者が単独で行える。
  • 所有権確認訴訟も単独で提起可能であり、持分多数の決議は不要。
  • 賃貸借契約の解除は処分行為に該当し、共有者全員の同意が必要。
  • 他の共有者の持分に基づく損害賠償請求は認められない。