過去問解説(経営法務)_2019年(R1年) 第19問

難易度・正答率・重要度

  • 難易度:★★★☆☆(保証制度の細かな規定理解が必要)
  • 正答率:★★★☆☆(正答率50〜70%。標準的な難易度)
  • 重要度:★★★★☆(民法改正後の保証制度理解として重要)

問題文

民法に基づく保証に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はなく、商法は適用されないものとする。


主たる債務者の意思に反して保証をした者は、求償権を有しない。
数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により単純保証したときは、全員が当該債務全部の弁済義務を負う。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が弁済をしたことを保証人に通知することを怠ったため、保証人が善意で弁済をしたときは、その保証人は、自己の弁済を有効であったものとみなすことができる。
保証人は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした場合において、債務が弁済期にあるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。

出典:中小企業診断協会|2019年度 第1次試験問題|経営法務(PDF)


解答

正解:ウ
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が弁済をしたことを保証人に通知することを怠ったため、保証人が善意で弁済をしたときは、その保証人は、自己の弁済を有効であったものとみなすことができる。


解説

ア:×
主たる債務者の意思に反して保証をした場合であっても、保証人が債務を履行すれば、法律上の求償権は認められる。委託の有無は求償権の発生要件ではない。

イ:×
数人の保証人が各別に単純保証をした場合、原則として各保証人は自己の保証範囲に限って責任を負う。全員が債務全額を負担するわけではない。

ウ:〇
主たる債務者が弁済したにもかかわらず、その事実を保証人に通知しなかった場合、保証人が善意で弁済したときは、その弁済は有効とみなされる。保証人の保護を目的とした規定である。

エ:×
保証人が委託を受けずに保証した場合、求償権は原則として弁済後に発生する。弁済前に求償権を行使することはできない。記述は誤りである。


学習のポイント

  • 保証人の求償権は、委託の有無にかかわらず、弁済によって発生する。
  • 数人の保証人が単純保証をした場合、連帯責任とはならず、各自の保証範囲に限定される。
  • 主債務者が弁済した事実を通知しなかった場合、保証人の善意弁済は保護される。
  • 弁済前に求償権を行使できるのは、委託を受けた場合など特別な事情があるときに限られる。